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「手伝います」
『大丈夫です。すぐそこなんで』
予想通りの答えが返ってきたけど、瞬時にトイレットペーパーより重そうだと判断した洗剤などが入った黄色いレジ袋を受け取る。
『ありがとうございます』
「いや、どうせ今から行くとこだったんで」
わざわざタクシーを手前で降りて声をかけといて、それ以上会話が進まない。
徒歩5分もかからない距離がすごく長く感じる。
Aさんが買い出し担当って決まってんのかな。進藤に行かせりゃいいのに。
まぁ、こういうのを自分の中だけで思ってないで声に出せば少しは会話が出来るんだろうけど。
俺にはそれすらも至難の業なんだよな。
「お。いらっしゃい」
ドアを開けて待っててくれたマスターは、今日も快く迎え入れてくれる。
『ほんとに助かりました。ありがとうございました』
Aさんは俺から袋を受け取って、厨房の中へ入っていった。
「今日はご馳走しないとね」
「いいですよ、そんなの。たまたまそこで会っただけだし」
「いいから。今日はアイス?ホット?」
少し歩いただけだけど結構喉が渇いてたので、アイスコーヒーを頼んだ。
「今日は仕事帰りっすか?」
「ん?ああ…」
アイスコーヒーを運んできた進藤が声を掛けてきた。
「学生、なの?」
「はい、大学生です。進藤です」
「進藤くん…」
そういえば進藤という名前は、たまたま耳に入って知ったんだったと思い、初めて知ったフリをしておいた。
閉店間際だったけど、さすがにサービスのアイスコーヒーだけ飲んで会計無しで帰るのは気が引けたので、急ぎめでアイスコーヒーを飲み干してブレンドを注文した。
もう俺以外の客がいないからなのか、今洗剤を買ってきたからなのか、Aさんはエプロンをすることなく、ずっと奥の化粧室の掃除をしてるようだった。
多分、今日はこのまま掃除して終わるんだろうな。
俺もコーヒーさっさと飲んで帰るか。
次はいつ来れるかな。
やっぱりもう少し早い時間だよな…。
「お待たせしましたー。ブレンドでーす」
進藤が俺の前にカップを置く。
「ねえねえ、加藤さーん」
は?
急に馴れ馴れしい口調で俺の名前を呼んで、進藤はカウンター越しに頬杖ついてこっちを見ている。
「加藤さん、もしかしてAさんのこと狙ってます?」
は?なにコイツ!
急になに言い出すの?
「いや?全然?
進藤…くんこそ、彼女のこと好き、とか?」
「……」
図星かよ…。
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まり(プロフ) - ゆかさん» コメントありがとうございます☆全部読んで頂いてるなんて、嬉しすぎます!温かいお言葉ありがとうございます。更新頑張ります。 (2019年10月12日 0時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
ゆか - 初コメですが、、以前から、コッソリとまりさんの作品大好きで、全て読ませて頂いております!低評価の件ですが、どうか気にする事なく、まりさん自身ムリのないよう更新頑張ってください!楽しみにしております(^^)/ (2019年10月11日 3時) (レス) id: 58f4b53075 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - ○○さん» コメントありがとうございます☆私の作品を見つけて頂いてありがとうございます。だいぶ元気がでてきましたので、最後まで頑張ります! (2019年10月8日 22時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - ひなさん» コメントありがとうございます☆年上彼女がマズかったのか、と悔いていたので少し安心しました。確かに、誰かが評価してくれると直後に低い点を入れられる、と言うのが続いていたんです…最後まで頑張ります! (2019年10月8日 22時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - りんりんごさん» コメントありがとうございます(^-^)温かいお言葉、励みになります。最後まで更新頑張ります! (2019年10月8日 22時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まり | 作成日時:2019年9月20日 3時