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【語り/Yugo】
慌ただしく何度も何度も
医師達が手術室から出入りを初めて数時間。
当初言われていた手術の終了時間はとうに超えている。
出てきた看護師さんに何かあったか聞いても
「お待ちくださいね」と足早に立ち去っていく。
「何かあったんじゃ…」
樹がソファに座り込んで
堪えきれずに涙を流し始めた。
「樹、絶対大丈夫だって」
そう慰める慎太郎の声も震えていた。
大我もソファに腰掛けて
祈るように手を組んで目を瞑ってる。
_______
俺は、そんな状況の中、今朝手術室に入る前の
北斗とのやりとりをぼんやりと思い出してた。
「ゆーご…おれに何があっても…
ぜったい…自分のこと…責めたりしなぃで
おれは…だいじょーぶ、後悔…しなぃょ」
既に麻酔が効き始めて朦朧としていて
最後は尻すぼみで聞き取るのもやっとだった。
“北斗に何かあったとき”、
同意書にサインした俺が自分を責めてしまわないように
そんなことを言ったんだ。
「ほっくんっ…」
俺の反応を待たずに、北斗は眠りについた。
数分前まで離れたくないとか死んじゃったら、
なんて言って、本当は怖くてしょうがないはずなのに…
___________
「前回手術した時の癒着が激しく
そこから出血してしまっているため輸血をしています。
一時的に血圧が急激に下がって危険な状態です…
櫻井先生と我々で最善を尽くしていますので」
忙しく出入りを繰り返していた医師のひとりが
やっと北斗の状況を説明してくれたけど…
途中からその声が遠くなる感覚がした。
大我とお互いに支え合っていなければ
倒れ込んでしまいそうだった。
そんな…さっきまでみんなで笑い合ってたのに…
あんなに強い子が、負ける訳ない。
どこかそんな根拠のない自信もあって…
それでも意に反して涙は止まらなかった。
「北斗の笑った顔が見たいッ…」
ただそれだけなんだ。
俺らから北斗を奪うことだけはしないで。
大我がグッと肩を抱いてくれる。
「助かるんですよねッ?」
「最善を尽くします」
慎太郎の問いに、
その、お決まりのフレーズをまた残して
医師は再び手術室へと消えていった。
“おれに何があっても”
北斗…だめだよ。
約束、したよね。
戻っておいで、北斗。
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KIKO(プロフ) - 新道踏切さん» 読んでいただきありがとうございます!楽しみにしてくれていたなんて嬉しすぎます。今後もよろしくお願いします(^^)また色々描けるように頑張ります! (2021年4月28日 10時) (レス) id: c67a5f8f31 (このIDを非表示/違反報告)
新道踏切(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ちょくちょく更新されらたびに、次はいつかなって凄く楽しみにしていた作品だったので、完結なさって嬉しかったです(^^)北斗くんの頑張りとか末っ子の可愛さとか最高でした!!また、KIKOさんの作品見てみたいので書いて欲しいです^^* (2021年4月26日 16時) (レス) id: 7158c48a17 (このIDを非表示/違反報告)
KIKO(プロフ) - しずくさん» ありがとうございます(^^)とても嬉しいです。これからもよろしくです! (2021年1月12日 8時) (レス) id: c67a5f8f31 (このIDを非表示/違反報告)
しずく - すごく面白いです。これからも頑張ってください。 (2021年1月11日 22時) (レス) id: 0ac6e112f4 (このIDを非表示/違反報告)
KIKO(プロフ) - まひるさん» コメント嬉しいです!これからも頑張りますのでよろしくお願いします( ;∀;) (2021年1月11日 14時) (レス) id: 6c56772b46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:KIKO | 作成日時:2021年1月10日 18時