赤緑短編集

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『神ちゃん、ほらっ！妹おるで〜！』


バカみたいに毎回毎回同じことを言っている兄の同級生たち。
高二の男子なんてホントに子供っぽい...

兄も毎度毎度同じことを振られて困っている。

でも兄はやっぱり優しいから、友達にもにこにこ笑いながら『え、どこぉ？ あホンマやぁ』って返事してあげてる。



でもこないだ兄の部屋で漫画を読みながらくつろいでいる時に言われた。

あれは私に気づいて欲しくてみんな言ってるんやで、って。

どゆこと？って聞いたら、Aが可愛いからやろなぁ、たまには俺だけやなくて友達にも手振ってやってや
...兄は苦笑いしながら私にそう言った。







......だから、





『...えっ？』


『こんにちは。兄がいつもお世話になってます。...えっと......』


『っあ、し、重岡大毅っていいますっ』


『重岡先輩... 。宜しくお願いします』



いつもは立ち止まることなんてしたことなかったけど、今日は兄の隣にいるあの男に話しかけた。

名前を聞いて、にこって笑って、兄にもじゃあねって小さく話しかけて...それだけ。

その時の兄の表情はよく見えなかった。

後ろの方で、『お前だけずるいやんー‼』
とか他の人たちが騒いでるのが聞こえて、
『神ちゃんの親友の特権やーーん‼』
ってアホみたいにあの男のでかい声も聞こえた。





そして偶然か必然か、その週の日曜日、兄があの男を家に連れてきた。
兄の友達が家に遊びにくるのなんて初めてかもしれない。

私は私で友達と約束があったけど、これは...

思わぬチャンスだった。

3→←それならば

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