No.3 正体 ページ5
「やぁ！無事に日本に来れたようでよかった！」
『久しぶり根津』
「いつの間に日本語を勉強したんだい？！この間会ったときは全く喋ることができなかっただろう？」
『頑張った』
「ハハ！凄い上達速度だね！これなら雄英での勉強も心配なさそうだ」
事前に話し合いが済んでいる2人だけあって、比較的和やかなムードで会話を弾ませるすぐ側で、相澤はAが出現させた航空機の脇に座り込んでいた。
とんでもない目に遭った。
相澤は数日前に根津からのロシア行きを承諾した自分を呪っていた。
Aは信じろと言っていたが、その運転は至極荒々しいものであり、そのような運転に慣れていなかった相澤はいわゆる空酔いをしてしまったのだ。
かといってAはケロッとした顔をしているし、あんな運転の仕方で事故らなかっただけマシだと言われれば、実際そうなのかもしれない。
気分の悪さから歯を食いしばりつつ、うんうんと唸っていると、Aが根津を肩に乗せ、相澤の近くへと寄ってきた。
『ごめんね相澤。運転下手くそだって黙ってた』
「あぁ何とか平気だから心配しなくていい。それよりおまえの詳しい話を聞かせてもらいたいんだが」
『ん、わかった』
Aは了承すると、背負っていたリュックの中からホチキスで纏められた紙の束を取り出して、手渡してきた。
「……これは？」
『私は個性因子の操作によって産まれたデザイナーベイビー。祖国のために戦うことを目的につくられた。今までずっと軍にいて沢山酷いことをしてきた』
ちらりと紙の束を捲れば、そこには彼女の研究データと思われる情報が何ページにも渡って記載されていた。
悲しげに俯くAに変わり、根津が言葉の続きを紡ぐ。
「……彼女の存在を知ったのは半年ほど前のことでね。デザイナーベイビーを極秘裏に生み出し利益を得ていた研究施設が摘発されて、既に売買された子供たちが明るみになったんだ」
「他にも櫻花のような子供がいるんですか？」
「いや。こればかりは各国の対応にもよるけれど……事実を隠蔽するために殺処分される子供たちが多い。僕が知る限り、残ったのは櫻花だけだと思うよ」
「……そうですか」
使い捨ての駒か何かだというのか。
研究によって生まれた人造人間であるとはいえ、生命である。
軽々しくそんな判断をしていいわけが無い。
「彼女の父方は実は日本国籍でね、政府の反対を押し切ってちょっとした交渉に赴いたわけさ！」
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作者名：かみなり猫 | 作成日時：2024年3月19日 18時
