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【その他備考】
“エデン・アレクサンドラは神が見えない。”
何故ならかつての彼にとっての神は、己だったからだ。

生を受けたその瞬間からエデンの人生は、それはそれは輝かしいものだった。勉強は特に努力せずとも周囲より高く点を取れたし、美術においては「神童」とさえ言われた程だ。現にエデン・アレクサンドラは文字通りの神童であったために、周りの大人や同級生たち、誰も彼もが「すごい」「すごい」と持て囃す。そうして少年は、若くして慢心した。他人を見下した。努力する(持たざる)者は可哀想だと哀れんだ。自分は選ばれた人間で、周りはそうでない奴らばかりだと。
─────結論から言うと、この幻想はエデンの自尊心と共に早々に砕け散った。S・プリエール学院に入学したことで、天才(現実)を直視してしまった為である。成績順は自分よりずっとずっと上で、人を寄せ付けない孤高で、皆が口にするのは全てその人の名前だった。自分が1番だった世界は、無慈悲に、無遠慮に、無自覚に……一瞬にして蹂躙された。相手は自分のことを知りさえしないというのに。本物の天才は眩しすぎて見えなかった。彼はここに来て初めて、自分が底知れない愚者である事に気付いたのだ。
これが原因で一時期は大好きな絵すら陳腐なものに見えてしまい描けない状態に陥ってしまった彼だが、自らを恥じ猛省した事で発想の転換に成功した。下から見上げるのではなく、「どうか並び立ちたい」と。才能を理由に過去の自分を救えないのは嫌だと、強く願ったのだ。

そこからの彼の追い上げは凄まじいものだった。エデンは生まれ持っての天才ではなかったが、”努力の天才”ではあったのだ。己を知らなかったあの人の視界に映るまで、そう時間は掛からなかったという。

“エデン・アレクサンドラに神の手は届かない。”
自分を救えるのは、結局自分しかいないということを身をもって知ってしまったからだ。

努力を厭わない、諦めないのはこういった経験が起因している。

一度芯からぽっきりと折れているためか精神面は比較的逞しい。どうしても不安な時は自分の名前を呼び大丈夫だ信じろと自己暗示する。また、人を悪意をもって見下すのも宜しくないと思っている。過去の自分に対する嫌悪的感情が見受けられるが、それでも自分を嫌わずに居られるのは昔あっての己、故に愛して然るべしという思想があるからである。

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作者名:やまざき | 作成日時:2020年6月29日 23時

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