【HQ】こもりくんとこほりちゃん【井闥山】 (ページ17)

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＊episode15＿勇者だね！ページ17

6月だか、7月だか忘れたが、
じめっとした重さのある暑さに辟易していた頃。

インハイ前ということで、
外部の体育館を借りて練習試合を行っていた。

その日はほりちゃんがこっそり見に来ていた。
(というか、佐久早に檸檬の蜂蜜漬けをパシられ届けに来ていた)

俺は午前が終わった頃に気づいたので、
なんで教えてくれなかったのだと佐久早に詰め寄っていた。

1年にして佐久早とともにスタメンに選ばれていたが、
俺はその日、調子が悪かった。

そんな姿をほりちゃんに見せたくなかった。

うだうだ文句を言う俺。
佐久早は無視して、黙々とほりちゃんの差し入れを食っていた。

「あー、あー、もう......」

「え、えっと、今度もりくんにも作ってくるね！」

ちょっとずれてる励ましだったが、
彼女なりの一生懸命に「ありがとう」と返す。

実際、差し入れはほしい。
なんなら佐久早のやつもほしい。

カッコ悪いなあ、と思いながら昼飯をとっていると、
ほりちゃんがおずおずと俺の顔を覗いてきた。

いつものお下げではない、おろされた髪が一束肩を滑る。

「あ、あの、私バレー詳しくなくて、
なんでもりくんはユニフォームの色が違うの？」

「あー、それは」

「むむむむ無知でごめんね！！今すぐ入門書を」

「待って待って待って、ほりちゃんんんっ」

今すぐ書店に走っていきそうな彼女を慌てて引き留め、
簡単にリベロというポジションを教える。

ほりちゃんは時折首をかしげながらも、ほーほーと頷く。

「だから、俺のは他と色が違うんだよ」

「はへー」

呆けてるような返事だが、
彼女らしい返事に笑みがこぼれる。

あー、癒し。

自分の不調も少し忘れられるような彼女の雰囲気に
身も心も癒されていると、彼女は「じゃあ」と言って顔を寄せた。

「もりくんは勇者だね！」

「んん？えっと......？」

ニコニコと笑う彼女だが、脈絡がないためわからない。
そして、彼女の表現は詩的である。

佐久早は我関せずといった風で見向きもしない。

「だって、あんなに早いボールを自らとりに行くなんて勇気あるもん！」

「っ......」

「みんな怖がっても立ち向かうなんて勇者だよ」

キラキラと藍色の瞳に星が輝く。

トスンッと自分が気づくくらい音がした。