〈３〉愛を運ぼう【夏油傑】

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(いっその事、彼女を私の手の中に仕舞(しま)えればいいのに)

 ――それは、ダメだ。私だけの意思で彼女を連(つ)れて行くわけにはいかない。

 何とか理性が私の事を制止(せいし)する。

「あ……」

 浅上さんの漏(も)らした声に？ を浮かべながら、どうかした？ と訊(たず)ねる。


「飯(メシ)食(く)うの忘(わす)れてたわ」

 そう言って浅上さんはイスから立ち上がる。そのまま台所で冷蔵庫(れいぞうこ)を開けた。

 座っている私からは見えないけど、何かを電子レンジで温め始めている。

 一方の私の気持ちは、落ち着かなかった。






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 昨日作ったキムチと牛肉に白菜(はくさい)、人参(にんじん)の炒(いた)め物をおかずに米を食べる。

 ソイツは自分で台所からマグカップと緑茶のティーパックに小皿を持ってくると、ウォーターサーバーからお湯を入れて、席に着いた。

 食べ終わって皿を洗(あら)っていた時。


「浅上さん、スマホ鳴っているよ」

 その言葉に急いで手の泡(あわ)を流して手を拭(ふ)く。リビングのテーブルに置いてあるスマホを手にして、応答ボタンをスライドする。

「もしもし神代(かみしろ)先生どうしました？」

『Aちゃん、繋(つな)がって良かったよ。急いで向かって欲しい所があるんだけど大丈夫そう？』

「――はい、もちろんです。ちょっと待って下さい」

 そう言ってオレはスマホを耳から離すと、オレを見ていたソイツに向かって言う。


「オレ今から出かけるから。アンタも来るなら準備して」

 そしてオレは耳にスマホを戻(もど)す。

「場所はどこですか」

『園崎(そのざき)病院だよ。Aちゃんが巡回(じゅんかい)してるギリギリの秋山中学校の地域にある』

 オレは神代先生の話を聞きながら、ウエストポーチを用意する。

 その間に視界(しかい)の端(はし)にいるソイツは、マグカップにウォーターサーバーから水を入れてお湯の温度を下げると、一気飲みした。



 

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