愛を運ぼう【夏油傑】

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 ソイツはそう言って頷(うなづ)くと、覚えておくね、と口にした。一週間前に料理をした時、オレが答えた好きな食べ物をソイツは忘(わす)れていなかったらしい。

「覚えてくれなくていいけど」

 いつもと変わらずそうやって憎(にく)まれ口を叩(たた)けば、忘れはしないさ、とソイツは笑顔(えがお)で口にする。

 オレはその反応に何で笑顔なんだコイツ…、と訝(いぶか)しむけど、ソイツの心の中が理解出来るはずも無かった。

 
「……アンタって話すの好きだよな」

「？ どういう意味かな」

「そのまんま。静かにしてること少ないだろ」

「ああ、それは浅上さんと話すのが楽しいからだよ」

「――は？？？」

 何気(なにげ)ない回答に、理解が追いつかなかった。


「アンタ、物好き過ぎるでしょ」

「何故だい？」

「オレと話してて楽しいとか頭がぶっ壊れてる。父さんかよ」

 ははは、と軽く笑うソイツは、浅上さんのお父さんとは気が合いそうだね。と口にする。

「父さんと気が合ったらキチガイだわ。まあ、アンタは元々キチガイに近い存在だろうけど」

「酷(ひど)いな。けどお父さんの言われ用も酷い。――お父さんはどんな人？」

「ただの親バカ」

「なるほどね。浅上さんは３人家族なのかな」

「一応」

「一応というのは？」

「オレ的には、ばあちゃんじいちゃんに伯父(おじ)も含(ふく)めて家族って感じ」

「なるほどね」


 今の家族の話を聞いて、きっとコイツは葛藤(かっとう)するんだろう。オレの家族には非術師がいるのか。出来ることならいないで欲しいと願うのではないかと、オレは感じた。

 だから、オレは口を開く――

「……今言ったオレの家族には、非術師もいるわ。けど、アンタの葛藤は必要無い。アンタの正義がオレに仇(あだ)をなすなら、オレはオレの正義でその前に立ちはだかる。それだけなんだからな」

 アンタはオレと仲良くしていたいって言った。それが続く限り、アンタは約束を守るって信じる事にオレはしたんだ。――――だから、アンタも約束を違(たが)えないでくれると――


(――そうだな、嬉しいって言うべきトコ)

 ――オレは嬉しい。と長い言葉を口にした。



 

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