愛を運ぼう【夏油傑】

…２ ページ28

 


「そうなるね」

 ソイツの言葉にオレは少しだけ安堵(あんど)する。

「……安心したわ。自分で作った悪霊退治してるなんて馬鹿(バカ)げた話だと思ったからな」

 オレは紅茶を口に含(ふく)んで飲む。そしてソイツを見つめて。

「約束してくれ。オレの前では非術師を殺さないって」

 もし、殺そうとするなら、オレはアンタの前に立ちはだかるよ。と、オレは静かに口にする。


「私は浅上さんと仲良くしていたい。始めからそのつもりだったさ」

「――約束」

 ソイツはその言葉に頷(うなづ)くと、約束だ、と口にしてくれた。


「アンタがただの人殺しじゃない事は分かった。その行いを許せはしないけど、アンタの事、見定(みさだ)めてみるわ」

「見定めてみる？」

「アンタは正体(しょうたい)がバレたからもう来ないわけ？ オレとしちゃ万々歳(ばんばんざい)だけど」

「いや、浅上さんの回答によってはそのつもりだったけど、その必要はなさそうだからね」

 ……そ、と言ってオレは席を立つ。


「じゃあ飯(メシ)作るからその気になったら手伝え」

 オレは台所に向かいながら告(つ)げる。

(野菜出しっぱだけど、まあダイジョブか)

 そう考えて、オレはとりあえず野菜とうどんを仕舞(しま)う。


(ありがとう、浅上さん。私の話を聞いた上で判断(はんだん)してくれて。――頭ごなしに否定(ひてい)しないでくれて)

 ソイツの微笑(ほほえ)みの裏(うら)の言葉が零(こぼ)されることは無かった。




＊
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 オレはうどんと具材に汁(しる)を器(うつわ)に入れる。入れたのをソイツに渡(わた)して、ソイツが手に持っていた新しい器を受け取って。

「そこ、箸(はし)。そのオレンジ以外なら使っていいから」

「ああ、ありがとう」

 ソイツはコップに入っていた箸をとってテーブルまで持って行く。オレも自分の分と箸を持って行って。

 その後、台所に戻(もど)ってオレンジ100パーを新しいコップに入れて。マグカップに緑茶のティーパックを入れて持っていく。

 小皿を取りに戻っている間にソイツはウォーターサーバーからお湯を入れて。

 頂(いただ)きます、と手を合わせたオレとソイツの声が重なる。



 

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