【H×H】純なる緋【クラピカ】 (ページ2)

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prologue ページ2

"『そうだね、君を此処から逃がして、世界を見せてあげよう…何て言ったら、君はどうしたいんだい…?』"

一番はじめの切っ掛けは、その一言だった。

どうして彼がそんなことしたのか分からないけれど、そのお陰で久し振りに、私は世界の空気を吸っている。

＿只一つ分かるのは、彼のその言葉で私の人生は大きく変わり始めている、ということだ。

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通りに出て、辺りを見回す。
港に船が一隻停まっているのを見付けて、きっとそれだと駆け寄った。

「すみません、私も乗せてください！」

船長らしき人に声をかけると、彼は右手を船の方に向けて合図をする。

「ああ、さっさと乗っちまえ。」
ぱたんと一礼し、船長の元を去って船の乗り口に足を向けた。

デッキの手すりに突っ伏して、遠く離れてゆく彼の地を眺めていると、不思議な感情に襲われて。

「何だか今日だけで、色々変わっちゃったなぁ…。」

…ふと、足元に大きな影を見付けて、空を見上げる。

影の正体はカモメの大群で、忙しなく大空を行き交っている。
そんな姿を見ていると人のようにも思えてきて、思わず笑ってしまった。

「ううん。きっと何とかなる筈だよね!」

根拠の無い自信だったけれど、不思議な事に仄かな暖かさが体にじわじわ巡っていくのが実感できた。

__本当に今日だけで、私の人生は大きく変わり出してしまった。

嘗ての私の居場所だった地はもう遥か、その輪郭を保つのがやっとになっている。

その様が清々しくも、少し心許なくも感じられて天を仰ぐ。

そうして心地よい海の揺れに身を任せながら、私はこれからの、一切予測も出来ない人生に思いを馳せては、瞳を輝かせた。