目が覚めて。 ページ42
パチリ、とゆっくり目が開く。暫く眠っていたのだろうか、なかなか焦点が合わずただただ白い天井がぼんやりと見えた。
身体もうまく動かないし、のどから出る声はかすれ声。
一体どのくらい寝ていただろう。焦点が少しずつあってきて、そこで私は初めて握りしめられている手の中のモノの感触に気づく。
見なくても分かる。ネックレスだ。
先ほどのことは思わず自分にとっての都合の良すぎる夢だと思っていたが、どうやら夢ではなかったらしい。その事実を突き付けられ、思わずまた涙が込み上げてくる。
…ああ、せっかく焦点が合ってきたのに、涙でまたぼやけちゃってさっきより天井が見えなくなっちゃったじゃないか。
そう思っても涙は止まってくれなくて、鼻をすする。抑えていた嗚咽が、部屋に響く。
「…A…?」
思わずビクッと肩が動く。この声は紛れもなく五条先生の声だ。…ここの部屋に先生がいたのか。先生の前で泣くなんてらしくない。急いで涙を引っ込めようと試みるが、それはできない。
むしろ、どんどん涙は溢れてきて、嗚咽も一度響くと続いて何回も何回も部屋中に響き渡る。
「…A、泣かないで」
私を支えながら優しく上半身を起こしてくれて規則正しいリズムで背中をやさしくたたいてくれる。泣かないで、って言われてるのにむしろ溢れてくるばっかりで。
でも、言わなきゃ。
『せんせいっ…、私呪いを解きました…ッ』
「…え?」
優しくたたいてくれた手がピタッと止まり、その手はするり、と先生の目隠しを外した。私にそっと近づいて綺麗な瞳が私をやさしく見つめる。
「…ほんとだ、解呪してる。
それどころか、彼女は君を助けようと試みてくれてるみたいだね。」
先生が言うんだから間違いではない。夢じゃない。
『…ゆるして、くれましたッ…こんな私を…あの子が死んだのは私のせいじゃないって、言ってくれ、てっ……ッ!』
そっか。と、頭を一撫でして、そっと優しく抱きしめてくれる先生。
あぁ、あの人もこのぐらい、温かったな。
私はその日、今までの分の涙をすべて流した。
抱きしめていた状態で先生の顔は分からなかったが、少しだけ、震えていた。
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ほしの。(プロフ) - シズ様 ありがとうございます!そう言っていただけてとてもとても嬉しいです…!ただいまテスト期間で死にそうでしたが、元気出ました!感謝です。。今後ともどうぞ、よろしくお願いします! (2022年10月20日 19時) (レス) id: 124138e0c0 (このIDを非表示/違反報告)
シズ(プロフ) - テスト頑張ってくださ〜い!主さんの作品めちゃくちゃ好きやから更新めちゃくちゃ待ち遠しいんよ! (2022年10月10日 8時) (レス) @page46 id: ce3f4b3801 (このIDを非表示/違反報告)
ほしの。(プロフ) - MEGUMI様 私もそのシーン拝見しました!めちゃめちゃかっこいいですよね!まじでわかります♡更新頑張ります! (2022年8月21日 11時) (レス) @page45 id: f3340582e1 (このIDを非表示/違反報告)
MEGUMI(プロフ) - 有難うございます!!初めて呪術廻戦見た時にさとるんの虚式「茈」を打つ瞬間めっちゃカッコ良くって惚れちゃいました♡更新頑張ってくださ〜い!! (2022年8月20日 16時) (レス) id: 835a7597df (このIDを非表示/違反報告)
ほしの。(プロフ) - MEGUMI様 初めまして!初めから読んでくださり有難うございます!落ちはできれば全員書ければな、と思っているので五条先生も書く予定です!五条先生推し!という方が沢山いらっしゃるので五条先生多めで書くかもです!これからも作品をよろしくお願いします! (2022年8月20日 11時) (レス) id: f3340582e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほしの。 | 作成日時:2022年4月17日 12時