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朝焼けの色は、桃色から橙色、そして黄色へと幻想的に移り変わる。
窓越しに眺める景色は、光を素直に受け入れていた。
宣言通り、五条は何分か経った後に戻ってきては、悠仁が目覚めた後に話すことを伝えてくれた。
「……私は、悠仁が生きてさえいれば、それでいいんです。 けど、何もしないとは言ってないです」
「そのつもりで、ついてくるんだろう? その時、僕にもう一回お願い事をしてもかまわないんだよ」
「……そうですね、今度は私が頼むかもしれませんね」
「あはは、出来ればご遠慮したいな。 僕捕まっちゃうよ! 恵にも怒られそうだ」
そんな、冗談に冗談を重ねるような、しかし探りを入れる見えない目線に、重い空気を感じると、五条は私の頬に親指を触れさせる。
「少し眠った方がいいんじゃない? 一睡もしてないでしょう」
「悠仁が目を覚ますまで眠れません。 それに……」
お爺ちゃんの火葬がある。 帰宅したらお婆ちゃんに話をした後荷造りを。
それに、病院に行って先輩方の様子を見ておきたい。 どちらもまだ目を覚ましていないのだ。
特に井口先輩は、重症だ。 悠仁だって、いくら心配してもし足りない状況で、とても眠ってなんかいられない。
無意識にスカートの端をきゅっと握りしめた。
五条はそんな私を見て「愛だねえ……」なんて、独り言を言っている。
「まっ! それはそうと、行きましょうか!」
突然はきはきと喋り出したかと思うと、「何処へ?」と聞く前に、既に悠仁は抱えられていて、私は腰に手を回されていた。 驚いて顔を見上げている間に景色は変わり、先程とは違う場所に移動していた。
(……あれは、こういうことだったのね)
驚きすぎて声が出なくなるとは、この事なんだと独りで納得していたら、五条はいつの間にか姿を消していた。
何かあった時用の部屋に行ったのだろう。 私はここで待って、悠仁の返答次第でどう動くかわからないので、五条が安全な場所として私をぽつりと部屋に連れてきた。
物音一つない部屋に、緊張していた体がふぅと力を緩める。
スカートのポケットにしまい込んでいたスマホを取り出し、【お父さん】と、画面越しに読む文字をタップする。
三回コールで出た電話口は、車内なのだろう。 窓を開けた先に聞こえる、ゴーゴーと車の通り過ぎる音が響く。
『――どうした?』
久しぶりに聞く渋く低い声は、私の重く伸し掛かる鎧を、簡単に崩していくのだった。
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クロワッサン(プロフ) - 猫助さん» たいっへん長らくお待たせいたしました(-_-;) コメントありがとうございます。 最新話更新いたしましたのでぐっすり眠れますね!! (2021年4月28日 3時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
猫助(プロフ) - 先が気になって気になって、夜しか眠れません…作者様、続きを…続きを…!(密かに応援しています。更新、ゆっくりお待ちしています!) (2021年2月27日 8時) (レス) id: b4292b3d94 (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - 人形師さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 続きをお待ちいただいてありがたいです ^^) 嬉しいお言葉、ありがとうございます。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - うたプリ大好き?さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 先を楽しみにして頂いて嬉しいです(*^^*) 作者かなりマイペースなもので…(^^; 気長にお待ちいただけると幸いです。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです!続きが気になります。応援してます!! (2021年1月25日 4時) (レス) id: 0a38f0e1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロワッサン | 作成日時:2020年11月19日 21時