いつもと違う朝5 ページ5
「いやっ、お母さん！！お母さん！！！！」
母の私の名を呼ぶ声が遠のいていく。大勢の声にかき消されほとんど聞き取ることすらできない。
あぁ、やばい
車から降りてしまったことを後悔する。
何かあったらどうしよう。
まるでこのまま世界が滅んでしまうのではないかと、陳腐なSF映画が脳裏をよぎる。
その時だった。
ビシャッーーーー。
まるで水風船が破裂したような音。
「えっ」
見えない。視界が真っ暗になった。
生ぬるい液体が全身を覆い、ひどい悪臭が立ち込めた。
なに？なんなの？
目にも液体が大量に入ったせいで激痛が走り、私はうずくまって目を擦る。
耳鳴りが起きたようにあたりは突如静まり返り、自分は死んでしまったのではないかと錯覚する。
恐怖と焦燥感でいっぱいになりながら、私は顔を何度も何度も拭った。
鉄臭い香りが立ち込め、ぬるぬるとした感触が私の五感を支配する。
「あ、…赤…？」
恐る恐ると目を開けるとそこには真っ赤な世界が広がっていた。
私の目が赤くなってしまったのか。
それとも辺りが赤いのか判断できない。
ただ一つ分かるのはーー
「お母さん？」
母がいない。
母だけじゃない。さっきまで私を取り囲んでいた大勢の人間まで姿を消している。
ただ辺りに広がるのは真っ赤な世界。
パトカーも救急車もまるで丸いものが衝突したかのように大きく凹み潰れている。
体に力が入らず、思うように動くことができない。
まるで悪い夢を見ているようだ。
ああ。夢ならお願いだから醒めてよ。
そう考えながら空を仰ぎ、糞尿の香りに混ざる鉄臭い匂いはいつしか慣れてしまって気にならなくなっていることに気がついた。
顔を覆う液体がパリパリに固まってきて、顔をうまく動かせない。
液体を吸った制服は重く私の体にのしかかる。
たった数分の出来事ーーーーーーー。
ただ、わたしには永遠とも感じられる時間の中、状況を把握しようとすることを放棄していた。
「なに？どういうこと…？」
後ろから突如声が聞こえた。
思うように動かない体を必死に捻り、わたしは後ろを振り返った。
そこには黒い服に身を包んだ、白髪頭の男の人。
目は黒い布で覆ったおかしな人がボヤける赤い世界の中、唯一はっきりと見ることができた。
これが、この日のわたしの最後の記憶だった。
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ゆうき(プロフ) - 時さん» すごく嬉しいです。ありがとうございます。時さんも更新頑張ってください。いつでもコメント欄いらっしゃってくださいね。 (2021年8月6日 11時) (
レス) id: 67d009fa41 (このIDを非表示/違反報告)
時(プロフ) - コメント失礼します！最初で一気に惹かれました！続きを楽しみにしています！無理せず更新頑張ってくださいね！ (2021年8月6日 11時) (レス) id: 65803b71a1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - ラリマさん» コメントありがとうございます。凄く嬉しいです。優しいお言葉感謝します。ラリマさんも体調にはくれぐれもお気をつけくださいね。作品の方にもお邪魔させていただきます(p_-) (2021年8月6日 0時) (レス) id: 67d009fa41 (このIDを非表示/違反報告)
ラリマ(プロフ) - コメント失礼します! 続きがすごく楽しみです！これからも体調に気をつけて更新頑張ってください！！！ (2021年8月6日 0時) (レス) id: 3c461fe813 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆうき | 作成日時：2021年8月3日 22時
