凱旋2 ページ23
美々子の言う通り、ここにきてから新しく用意された服は訓練のたびに、血に塗れ、激しく汚損している。
Aはこの施設にきてから、身の回りのものは美々子と奈々子に用意、管理してもらっており、実際には見ていないものの、Aが過酷な訓練に身を置いていることには気付いていた。
『でも、反転術式?結構使えるようになったんだよ。痛いのは一瞬だけだし、痕も残らないし。ほら、なんならお肌もピカピカだよ。』
Aは曇りの一つもない透き通るような肌を美々子に見せた。しかし、美々子は肌には視線をくれず、じとっとAの目を睨み続けた。
「A。この美々子様奈々子様の目は侮れないから!夏油様のためにも強くなるのは大事だけど、自分の体が一番大事!」
「って夏油様が言ってた。」
『あは、そうよね。そうなんだよね。分かってるんだけどなあ。』
なんだか居ても立っても居られなくて。
最後の言葉を飲み込んだ。ソファの下に垂らした足を抱え込み、Aは俯いた。
私は別に夏油さんのためじゃないけど。復讐のためだし。けどなんかそれだけじゃないというか。なんというか。
自身が力をつけていっていることは自覚していた。
かつて望んだ復讐を胸に、夏油の後をついてきた。
ただ今は目まぐるしい日々に気圧され、進展しない事態に歯痒く思うことが多かった。
訓練始めてすぐに言われた夏油の言葉。
”この訓練で、私に傷一つでも付けてごらん。じゃないと、君に真実にたどり着く資格はないよ。”
そんな日、いつ来るのよ。
「A…?」
『よしっ!』
俯くAに恐る恐る声をかけた双子は、突然立ち上がるAに身をのけぞらせた。
「な、なに」
『2人とも!私明日からもっともっと頑張る!2人に心配かけないくらい!強くなる!悩んでても仕方ないもんね。自分にできること今精一杯やらなくちゃ!ありがとう、2人とも!!』
拳を握りしめ豪語するAを双子は目を丸くした。そして、小さな声でつぶやいた。
「私たちの言ってること…」
「なんも伝わってない…」
その言葉は、もはやAの耳には届かなかった。
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ゆうき(プロフ) - びびでばびでぶー (3月8日 22時) (レス) id: de69babae1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - ここまでスクロールしてくれたあなたはこの小説のファンということでよろしいでしょうか (3月7日 21時) (レス) id: de69babae1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - はちゃめちゃにイチャイチャしてるの書きたい、ストーリー展開させていくのきちゅい (3月7日 21時) (レス) @page37 id: de69babae1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - コメントほちぃ… (3月3日 23時) (レス) id: de69babae1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆうき | 作成日時:2023年12月15日 18時