「…恋の始め方」 (ページ19)

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☆ ページ19

数週間経ったある朝

少し早く目が覚めて家を出た

時間余裕あるし一本吸ってから行こうかと思い最寄駅の喫煙所へ立ち寄った

樹「Aちゃん！」

げっ…
やっぱり出よう

樹「Aちゃん！なんで逃げるの？」

タバコを消して追ってきたのかふぁっと嗅ぎ慣れた匂いを纏って隣へ並んでくる

　「おはようございます…」
樹「朝から会えるなんて奇跡！」
　「そんなことないと思いますけど」

樹「ねぇ、あの時の約束覚えてる？」
　「…なんのことでしょうか」
樹「惚けないでよ！連絡先教えて？」

あの時とは違ってパキッとスーツを着て長い前髪はしっかりと整えられている
ジャラジャラとつけられていたピアスはなく、メガネなんかしちゃって

不覚にもカッコいいななんて思ってしまった

　「用もないのに連絡先って必要ですか？」
樹「用ならある！というか作る！だから教えて」

このまま断り続けたら会社まで着いてきそうな勢いだ

　「わかりましたよ…」

ぐいぐいとくる田中さんに押し負けておずおずと携帯を差し出す

やったーなんて言いながらニコニコして登録をすすめる

樹「はい！これ俺のLINE！何にも用なくても連絡してね♪」
　「それはないと思います」

子供のように口をへの字にしている
この人朝から元気だなぁ…

樹「じゃあ俺こっちだから！また連絡するね！今日も頑張ろうね〜」

手が取れるんじゃないかというぐらいブンブン手を振ってエスカレーターに乗って行った

明日はいつもと同じ時間に出よう
毎日鉢合わせるなんてごめんだと思う反面
明日もこの時間に出れば田中さんと会えるのかなと思う自分もいた

朝から何だかどっと疲れた