2 ページ26
お茶会当日。
ハーツラビュル寮のある一室で、ユウは頭を悩ませていた。
｢着物なんて、自分一人で着たことないのに……｣
遡ること十分前、お茶会の予定時刻よりも五分早くハーツラビュル寮を訪れたAは薔薇の咲き誇る庭園へと通された。
自然の甘い香りが肺を満たして、彼女はほんの少しだけ目尻を下げる。
そんな柔らかい表情を見ることの出来たリドルとケイトは嬉しそうに笑いながら、Aを椅子へと滑らかにエスコートした。
そして、ユウが頭を悩ませる原因となったのはエースの一言であった。
｢そういやさ、ユウとAの国の伝統的なものって何なの？｣
｢伝統的なものかぁ……日本食とか？ お正月もそうだし、お雛様とか、後は着物とかかな！｣
｢ニホンショクは食べ物だろ？ キモノって何だ？｣
｢着物は日本の伝統衣装だよ｣
｢へぇ、そんなのあるんだね。けーくん見てみたいな〜｣
｢Aのユニーク魔法で出せたりしないのか？｣
｢可能ですよ｣
Aが素直に応えると、彼らは一様に瞳を輝かせて二人に着物を着て欲しいと強請ったのである。
Aは最初から諦めモード、ユウは強く言われると断れないタイプ、逃げ道は皆無だ。
その結果、Aはユニーク魔法『
因みに彼女自身は普通の着方をしていない為、普段着ている格好に着替えることなる。
別室で着替えることとなったのだが、ユウは洋服を着ている令和の人間なので、着物を一人で着ることが出来なかったのだ。
｢うぅ……着れないよぉ｣
ユウが泣き言を漏らしたその時、隣の部屋から壁をノックされた。
｢無理だー！ Aちゃん、口頭でいいから教えてくれない？｣
｢口頭で理解出来るのですか、貴方｣
｢…………無理です｣
ユウが着物一式を抱き締めながら項垂れたその時、何故か部屋の扉のノブが回される音が聞こえてくる。
まさかと思いそちらを見ると、上半身はサラシ姿で、下には黒のインナーパンツを履いたAが部屋に入ってきているではないか。
しかも、彼女は着るつもりであろう着物を羽織り、緩く腰紐で締めてあるだけの格好だ。
｢う、うっ、うわあああああああっ！！？！？｣
｢――どうした、ユウ！｣
ユウが耐えきれなくなって叫び声をあげると、それを聞きつけたエーデュースが部屋に駆け込んでくる。
そして、着崩れた状態で平然とユウの着付けをしているAを見て、二人も叫んだのであった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1419人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みっきーうっきー - とても、面白い作品ですね。更新停止とかやめてくださいね！応援しているので、頑張って下さい！諦めないで下さい！ \`∀´/ (2020年4月14日 22時) (
レス) id: fbdfd6ec63 (このIDを非表示/違反報告)
＊＊(プロフ) - 本編への組み込み方はもちろんのこと、描写のひとつひとつが美しくて読んでいてとっても楽しいです…！素敵な主人公ちゃんと出会わせてくれてありがとうございます。これからも楽しみにしています！ (2020年4月13日 13時) (レス) id: dd9fb51a76 (このIDを非表示/違反報告)
マツリカ(プロフ) - たまらないほどに読み進めてます！！こういう主人公ちゃん大好きです！！！続きを楽しみに何度も読み返してます。応援してます！頑張ってください！ (2020年4月12日 22時) (レス) id: 88d493ffab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆるり | 作成日時：2020年4月12日 18時
