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かぷり。
最初はただ歯が当たっているだけであったのだが、次第に力が込められて犬歯が肌にくい込んでくる。
ぷちり、と肌が裂ける音が聞こえてきた。
｢……ふん｣
｢いや、ふん……ではなくてですね。指の付け根に跡が残ってしまったのですけれど、どういうおつもりですか｣
｢あ？ シルシだ、シルシ｣
彼は百獣の王、ライオン。
狙った獲物は逃がさず、徹底的に追い詰めて噛み千切って腹に収める。
つまり、彼女は今、レオナから獲物認定されたということだろう。
｢肉食動物同士でも、喰らいあうだろ？ お前は俺の獲物だからな｣
獲物という言葉は、彼女が予想していたよりも己を苛立たせていた。
確かに幼い頃は大切なモノを他者から奪われ、壊され続けてきたが今は違う。
平成時代でも、更には戦国時代でも、Aは捕食者の頂点に立つ人間なのだから。
ニヤリと不敵な笑顔を浮かべていたレオナであったが、目の前に立っていた筈のAが一瞬で視界から消えたことに驚き、その表情が強ばった。
彼女の香水ではない甘い香りが横から香ってきた為、慌てて体を右に向けると、何かが首に添えられる。
｢……っ！？｣
それは、獣の手を想像させるかのように指の関節を曲げたAの手であった。
綺麗に爪が切りそろえられているので痛くもないし、傷もつかないが、もしもこれが手でなく武器を持っていたのならば頸動脈が傷付いているだろう。
｢がお……なんて、ね｣
色の深みが違う、彼女の碧眼がレオナの翡翠の瞳を見つめ、そしてゆっくりと逸らされた。
そのまま腕を下ろして、ほぼ聞こえないような足音を立てながら此処から立ち去っていく。
その後ろ背を、レオナはギラついた瞳でずっと見つめ続けていた。
＊＊＊
リリアに鼻にキスされたり、リドルから甘やかされたり、レオナから指を噛まれたりしたものの、Aは一旦それらを放置した。
慎み深いと評される日本人と違って、西洋人だからこそスキンシップが激しいのだろう。
彼女の周りにいた武将達もかなりひっつき虫だったが、そこは考えたら負けだ。
｢さて……そろそろ霊力を元に戻さなければ不便ですね｣
魔法士になりたいわけでもないが、この世界で生きていく上で霊力は必要不可欠だ。
もしも魔力に変換出来れば万々歳である。
ということで、誰にも邪魔されないような場所を探し回った結果、Aは学園裏の山の奥地へと足を踏み入れたのであった。
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にゃーちゃん - とても面白いです！これからも頑張ってください！ (2021年5月16日 20時) (
レス) id: 6c3b400c86 (このIDを非表示/違反報告)
しおあめ。(プロフ) - 突然のコメント失礼します。フロイドが主人公につけたあだ名の"クリオネ"は、すでにオルトを指すものとして使用されていたと思います。 (2021年4月5日 13時) (レス) id: e70718cc0c (このIDを非表示/違反報告)
はまぐり - はぁーー好みです！面白いです！！ (2020年5月30日 16時) (レス) id: fe50b1b3b6 (このIDを非表示/違反報告)
蝶妃 - 夢主ちゃんとキャラの絡みが見ていて面白いです！マレウス様やリリア様ともっと絡んで欲しいですね。これからも頑張ってください！！ (2020年4月8日 7時) (レス) id: 1fa4972d94 (このIDを非表示/違反報告)
リリア - 初めまして、読んでいて楽しい作品ですね、主人公のキャラも結構好きです。勿論ゆるりさんのペースで更新頑張ってください (2020年4月7日 22時) (レス) id: 008426968d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆるり | 作成日時：2020年4月2日 1時
