ようこそ、異世界へ ページ1
かたり、かたり、と何かが揺れて音を立てていることにAは気が付いた。
「……?」
先程まで自室にて仮眠をとっていたのに、どういう理由かは分からないが、何者かの手によって外に出されたようである。
だがここで一つ問題があった。
Aは様々な経緯があって他人の気配に途轍もなく敏感だというのに、目が覚めることがなかったのである。
すると、暗闇の外から誰かの声が聞こえてきた。
「やべえ、そろそろ人が来ちまうゾ。早いところ制服を……うーん! この蓋、重たいんだゾ!」
少し高めの声。
目を閉じて、外の気配へと意識を向けると驚きの事実が分かってしまった。
「人間では、ないのですか……」
そう、外で何やらガタガタと蓋を開けようと必死になっている男は、人間ではなく猫の身をしていたのである。
不思議な能力を持っていたり、人とは少し違う見た目をしている人間と接してきたこともあるが、人語を話す猫は初めてだ。
動物好きのAからすれば歓喜だ。
どんな容姿をしているのだろう、と警戒よりも興味が勝って、この暗闇から抜け出そうとしたその時、青いナニカが唐突に暗闇を照らしたのであった。
「……っ」
「さてさてお目当ての……って、ぎゃーーー!! オマエ、何でもう起きてるんだ!?」
「話す猫さんですね」
やはり居た、話す猫だ。
普段無表情を貫き、冷静な態度を崩すことなく、時には他者から冷酷無比と表されることのあるAが瞳を僅かに煌めかせて喜んでいる。
この姿を知り合いが見たら卒倒するであろう。
「猫さん、お名前は」
「オレ様はグリム様なんだゾ! オマエは?」
「お初にお目にかかります。名を、AAと申します」
「ふーん……はっ! 違うんだぞ、オレ様は世間話をしに来たわけじゃねえんだゾ! そこのニンゲン! オレ様にその服を寄越すんだぞ!」
はて、"服"とは。
Aの認識では、自分は黒色を基調とし、白百合の咲き誇る着物を身に纏っている筈だ。
だがどうだろう、今や和服は洋装に姿を変えており、見たことの無い制服を着ているではないか。
これには流石のAも少しだけ目を見開いた。
何も返答をしないAに痺れを切らしたのか、グリムは青色の炎を盛大に燃やして脅しをかけてくる。
「然もなくば……丸焼きだ!」
Aからグリムに対して敵意は皆無だが、どうやら向こうは大有なようだ。
此処は一旦退くべきだと考えたAは、彼の様子を伺いながら駆け出したのであった。
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にゃーちゃん - とても面白いです!これからも頑張ってください! (2021年5月16日 20時) (レス) id: 6c3b400c86 (このIDを非表示/違反報告)
しおあめ。(プロフ) - 突然のコメント失礼します。フロイドが主人公につけたあだ名の"クリオネ"は、すでにオルトを指すものとして使用されていたと思います。 (2021年4月5日 13時) (レス) id: e70718cc0c (このIDを非表示/違反報告)
はまぐり - はぁーー好みです!面白いです!! (2020年5月30日 16時) (レス) id: fe50b1b3b6 (このIDを非表示/違反報告)
蝶妃 - 夢主ちゃんとキャラの絡みが見ていて面白いです!マレウス様やリリア様ともっと絡んで欲しいですね。これからも頑張ってください!! (2020年4月8日 7時) (レス) id: 1fa4972d94 (このIDを非表示/違反報告)
リリア - 初めまして、読んでいて楽しい作品ですね、主人公のキャラも結構好きです。勿論ゆるりさんのペースで更新頑張ってください (2020年4月7日 22時) (レス) id: 008426968d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆるり | 作成日時:2020年4月2日 1時