5 ページ38
そう簡単に殺されては堪ったものではないし、何より素直に死を受け入れることなど出来やしない。
Aのなかで、この理不尽なルールにメスを入れて切り刻み、細部を変更しなければならないという使命感が珍しく芽生えた。
せめて彼らだけでも無事に帰らさなければならないし、何より死ぬことを運命づけられるだなんて腹立たしいことこの上ない。
｢……一つ、物申したいのですけれど｣
『今、貴方達に発言権は与えられて――』
｢黙れ。大人しく私の話を聞いていろ、男｣
スピーカーから息を飲む音が漏れてくる。
女の声に聞こえるように変質させているのに男だと気付かれた動揺、機械越しであるのに感じる畏怖、明らかに格下である筈の女に対して気圧された事実。
それらの感情と動揺が全て、その微かな吐息に含まれていた。
何故相手が男だと分かったのか、という疑問の込められた視線がひしひしと突き刺さるものの、今はそんなことを気にしている暇はない。
Aはそのまま口を閉ざすことなく、つらつらと言葉を重ねていった。
｢何故、人狼に狙われた村人は為す術もなく殺されなければならないのでしょうか。人狼が必ずしも人間よりも強いとは言い切れないでしょうに。……この世界は魔法があるのですから、五つの幼子が巨漢を吹き飛ばすことも出来る筈でしょう｣
『黙りなさい』
｢生きとし生けるもの、死というモノを簡単に受け入れることの出来る方など殆ど居りません。私はその点が納得出来ないのです｣
『黙れ！』
｢幼子の人狼だとしても、貴方は人間が人狼に負けると言い張るのですね……何とも愚かで浅ましく、腰抜けのようですねぇ｣
『黙れぇッ！！』
｢――っ、ぅ｣
首輪が勝手に締め付けを開始した為、Aは己の首を両手で押さえながら背中を丸めて膝を突いた。
ヒュッと音を立たせ、苦しそうに息を吸おうと必死に口を開けている彼女を助けようとリドル達が駆け寄ってくる。
が、実際は演技なのでそこまで苦しくはなく、これは観覧者である薄汚い金持ち共へのパフォーマンスの一環であった。
｢手をっ、出しましたね……｣
｢あぁ、何と酷い方なのでしょう！ Aは意見を口にしていただけだというのに、黙らせる為に首を絞めるだなんて。これで貴方の……｣
｢｢ゲームマスターとしての権利と立場は消え失せましたねぇ｣｣
Aの真意を汲み取ったアズールが援護射撃に入り、彼女と同じ言葉を紡いでいく。
ここで漸く、他の面々もAの目的に気付いたようだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2044人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆるり(プロフ) - 哭狼さん» ありがとうございます〜〜！ 嬉しいです……更新頑張れます！これからもどうぞ、よろしくお願い致します！ (2020年7月2日 9時) (
レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
哭狼 - ゆるり様、夢主の推察能力が半端なくて素敵でした！物語の続き楽しみにしてます。この作品が、大好きです(^^)すごく面白かったですm(__)m (2020年7月2日 2時) (レス) id: adf4aefcff (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり(プロフ) - リリア最推しさん» 勿論出演予定ですよ！この後のお話に出てきますので、少々お待ちくださいませ！ (2020年6月28日 14時) (レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
リリア最推し - 夢主の髪が切られたら1番黙ってない妖精王が居ますけど、出演ありですか？？ (2020年6月28日 13時) (レス) id: 1fa4972d94 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり(プロフ) - 哭狼さん» お褒めいただき光栄です〜！ 私の文章能力で、書きたいことが伝わるか不安でしたが……良かったです！ (2020年6月28日 8時) (レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆるり | 作成日時：2020年6月21日 12時
