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まさかの初日でラブのホテルとかやばくないですか心臓バクバクですけど私。
そんな事を考えながら大きめのベッドに座り、先にシャワーを浴びてくるーと言っていなくなったセンラくんが戻ってくるのを待っていた。
スマホで時間を潰していたのだけど、センラくんが適当に選んだ部屋がまさかの硝子張りのシャワールームで音筒抜けだしシャワーの音とかたまにセンラくんが吐くため息みたいなのとかすっごい聞こえるんだよね無理。
もうこれ、普通にいつもみたいに家帰ってそらると一緒にご飯食べてればよかった……
「Aちゃん上がったで〜〜」
「うぇ?!」
「そんなに驚かんでもええやーん。ほら、次入ってきー」
何だか私だけ緊張しているみたいで恥ずかしい上に、こんな余裕な風情から察するに……センラくんかなり慣れてるんだろうな。
バスローブ姿の彼は、あっつーと言いながら手をうちわのようにして扇ぎ、髪の先からはポタリと艶めかしく水を滴らせた。センラくんうちの部署でも随一のイケメンだもんね、そりゃ絵になるわ。
なんて遠目に思っていると、一向に動かない私を不思議に思ったらしいセンラくんがそのある意味で目に悪い格好をしながらこちらに歩いてきた。
「おーいAちゃん?だいじょーぶ?」
「っ、だ、大丈夫」
「んふふ、顔真っ赤やねぇ。彼氏とは来た事ないの?こーゆーとこ」
「いや何回かあるけど……慣れる訳ないじゃん、いつまで経っても恥ずかしいよ……」
そらるとは来たことないし、そもそも来たことあるの元彼とだけど。
まぁそれもそらるが人外で吸血鬼であるとはさすがに口外出来ないので、曖昧にして誤魔化してるだけであって嘘ではない。
元彼の話したらそらるはめちゃくちゃ拗ねるから今まで内緒にしてきたけど、私それなりに恋愛してきたからね。そらると暮らし始めてからは彼ばっかりに付き合わされて出会いなんてめっきりなくなったけれど。
「……そろそろか、」
「え?」
センラくんが何か呟いて、聞き取れなくて聞き返したけれど、返事が返ってくるよりも先に物凄い音を立てて突然ルームの窓ガラスが割れた。
ガッシャーン!なんて生易しい音でもない破裂音に近いものが鼓膜に入り、私は思わず身をすくめ、軽く悲鳴を上げながら無意識に傍に居たセンラくんの背後に隠れる。
そして、見覚えのある容姿と声の人物がこちらに歩いてくるのが見えた。
「……随分とお楽しみだったみたいだね、A」
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