【歌い手】私の全てを受け入れて。ver.B【大型コラボ】 (ページ20)

今日:34 hit、昨日:0 hit、合計:58,051 hit

＊ページ20

席は確保して、食べ始める。今日は日替わりＢランチ、オムライスにスープ、サラダ、デザートがついてるのにワンコイン。

「…あれ、朝ほっぺたに何もつけてなかったですよね。どうしたんですか？」

「ん？ああ、これな。Aちゃんと別れたあと朝イチで営業やったんよ。ウチと向こう案外近くてさ、車出すまでもなかったから歩いて行ってん。」

ご飯中で箸をくるくるさせて思い出しながら話してくれるセンラさん。ちょっと可愛い。こりゃモテるわ、なんて。

「ほんで、昼前に営業無事に終わらせて帰ってくるやろ。そしたら会社前でいきなり目の下にでっかいホクロつけとる男に殴られたんよ。世の中物騒すぎひん？センラがイケメンやったからかな…。」

「それに頭紫でめっちゃド派手やったんよ。最近の若者怖いわ〜センラ着いていかれへん。ま、言うて俺も髪の毛黄色やけどな〜」

「…え、」

目の下のホクロと紫の髪。それだけで判断するのは安直だけど。今朝早くから彼はいなかったし、出社した時に感じた刺すような視線。まさか…

「あ、そうや。Aに手ェ出すなって言われてんけど…何や、知り合い？」

動悸が激しい。一気に寒くなりぶわっと広がる鳥肌。目の前がぐるぐる回ってる。

「ちょ、どないしたん顔真っ青やで。…あ、分かった彼氏やろ〜。嫉妬やな？ええなあ若いって。」

「彼氏さんに顔はあかんって伝えといてや？せっかくのイケメンが無駄になってまうからね。」

そうやってセンラさんはおどけてくれたけど、私はそれどころじゃなくて。笑わなきゃいけないだろうに笑えない。

呑気にご飯食べてる場合じゃなくなって。とりあえずセンラさんから離れないと、

「…あ、わたしやらなきゃ行けないこと思い出したのでお先に失礼しますね、」

「え？まだ全然食べてないやん。倒れるで？」

「あんまりお腹すいてなくて…失礼します、」

心配してくれてるセンラさんの声を無視しお盆を持って片付けにいく。トロトロのオムライスを残飯入に捨てて食器を返す。ごめんなさい、

「ごちそうさまでした。」

ふらふらながらもどうにかデスクに戻って仕事を再開する。内容は全くと言っていいほど入ってこない。自然と呼吸が浅く、早くなった。

寒い。気温が急激に下がったわけでも、空調が直撃する訳でもない。なのに寒くていられない。

どうにか六、七年の意地で耐えて、午後を終わらせる。休憩中に調べた湿布代と一言添えたメモをセンラさんのデスクに貼って足早に帰る。