【まふまふ】その行為、猫同然です/Shiro兎 ページ1
「じゃあ、行ってくるね」
「ん……」
目を軽く擦るが頭はボーッとしたままの彼。ずっと作業をしていたせいかあまり寝た気がしないんだろう。
「…もう行くの？」
「うん」
「やだよ、行かないでよ……」
ハッと頭が冴えたのか突然駄々をこね始めたまふくん。こうなってしまった彼はめんどくさい事この上ない。
「ま、まふくん……」
「お願い…今日休んで、」
「ごめん無理」
その手には乗らない。付き合いたて当初、その手にまんまと引っかかって会社を無断欠勤してしまった事がある。それ以来私は心を鬼にして、バッサリ切り捨てた。
所謂切り捨て御免、というやつである。
「けち……」
「なんとでも言いなさい。じゃあ、行ってきまーす」
「あ、…」
何か言いたそうだったがドアを閉めた。これ以上構ってたら会社に遅刻してしまう。
★☆★☆★
──猫は自分のナワバリが他の猫に侵入されないよう、自分のナワバリ内のものに自分のニオイをつけるマーキングをする習性を持っているらしい。
ウチで飼っているいろはとぽてとも僕やAが外から帰ってきたら、足元に体を擦り付けている(めっちゃ嬉しい)。
……かく言う僕も、Aが帰ってきたらずーっと抱きついている。
だって会社で働いてるんだよ？絶対変な輩と至近距離で喋ってるに違いない。
欲を言えば、Aに会社を辞めてほしいとつくづく思っている。僕の収入だけでも余裕で生活出来るのにも関わらず、Aは働きたいと言って聞かない。
最近はあんまり口には出さないようにしている。しつこく言いすぎるとAに嫌われてしまうし、Aに嫌われるくらいなら死んだ方がマシだ。
「にゃ〜…」
「ぽてとぉ〜……」
近くに寄ってきたぽてとを優しく抱きしめる。やっぱりぽてとは可愛い。世界で二番目に可愛い(一番目はA)。
「これくらいAも素直だったら……」
最近Aは仕事が忙しいのかあんまり構ってもらえてない。構ってくれよおおおお……
ピロン、とスマホに着信が入る。この音はAだ(僕は人によって音を変えている)。
『ごめんまふくん。今日後輩の女のコと飲みに行くから遅くなる』
ごめんなさい、と猫の謝っているスタンプがたて続けに送られてきた。
「……しぬ」
ここんとこ残業が多くて病みかけてたのに…。はい、もうこれで病みましたお疲れ様でした。
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