ルハン君の憂鬱 ページ28
春が過ぎて、夏が来た
俺にとって転機となったこの夏は
沢山の苦い経験の塊だった
『もう、先生を困らせたくない』
潤む瞳で俺を見つめ、固く拳を握った姿
目で追っているのに気付かずに
もう好きではないと言っていたA。
俺は気持ちを捨てた。
捨てたつもりで生きている
まだ、好きなのかもしれないけれど
俺はそれを認めなかった
『お前はAが好きなのか？』
真っ暗な瞳の中に見つけた
優しい愛
先生はきっと、それに気付いている
だからこそ苦しんでいる
苦しいなら物にすればいいのに
それが出来ない先生は
きっとA同様 涙を隠して生きているのだろう
怒涛の夏が過ぎた今
肌寒い秋が来た
制服も夏服から冬服に変わり
ブレザーを着る生徒も増えた
窓からやってくる風も
体温を奪うような冷たい風に変わってきている
「せんせー」
「あー？」
もうすぐこの席ともサヨナラ
先生と話す機会も 前と比べて減るだろう
「もうすぐバイバイだねー」
机に肘をついて、さり気無くそう言えば
「煩い小鹿の世話係からやっと解放された」
寝癖のついた前髪を掻き上げ
ケタケタと楽しそうに笑う先生の姿を見て
胸が少し痛んだけれど
「良かったじゃん」
色んな意味を含めて、そう言ったら
「それはそれで何か寂しいな」
犬を撫でるように俺の頭を撫で
よしよし
そう笑った。
最近先生はよく笑うようになった
そして、Aも同じようによく笑うようになった
これはもう、
俺の出番も無さそうだ
「先生、俺が恋しくなったら教科書の124ページの犬見てね」
悪戯っぽくそう笑うと
「馬鹿か」
ふはっと先生も笑った
秋の風が吹き込んだ
その風を遮るように窓を閉める
一つ溜息を付くと
今まで閉じ込めていた物が溢れだしたような気がした
俺の憂鬱はまだまだ続く
きっとこの秋が過ぎて冬が来ても
俺の憂鬱は続くだろう
だけど、冬が過ぎて春が来たら
この想いも消えて
心から愛せる人に出会えたら…なんて
そんな願いは贅沢すぎるだろうか
「ルハン君の憂鬱…か」
声に出してみると、何だか面白くて
秋の風に乗せて
俺は小さく 笑った
―― ルハン君の憂鬱 THE END ――
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IRa(プロフ) - さくみんさん» レスありがとう！読んでくれてありがとうね。そろそろるうちゃんのお話を書こうかなーなんて考えてます。笑ショウタイムもう一回して欲しいな…なんて考えてます。笑 (2014年3月27日 0時) (
レス) id: 254cfcd45f (このIDを非表示/違反報告)
さくみん - 読みました！！カイ君、生物か数学っぽい！白衣やばいわwるぅの憂鬱、感情移入しちゃったよ・・・。もう、切なすぎる！今回もiraおんに独特の世界観でした！そして、カイヨル！estでもやばかったもんね！ちゃに、やばい・・・。 (2014年3月13日 22時) (レス) id: f0528f3edf (このIDを非表示/違反報告)
IRa(プロフ) - 美優さん» ありがとう！いつも励みになってる~~ また書けるように頑張るね~~ (2014年1月25日 13時) (レス) id: 422890ccf1 (このIDを非表示/違反報告)
美優(プロフ) - この作品も本当に楽しかったよ！！ほんとに、素敵な時間をありがとう！これからも小説、楽しみにしてます！ (2014年1月23日 13時) (レス) id: 5c50b9abe2 (このIDを非表示/違反報告)
IRa(プロフ) - さらさん» そんな勿体ないお言葉TT ありがとうございます~~ 読み進めていただきありがとうございました！これからもどうぞ、宜しくお願いしますね~~ (2014年1月23日 10時) (レス) id: 422890ccf1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：IRa | 作成日時：2014年1月15日 18時
