聞こえますか、この声が。 (ページ22)

今日:4 hit、昨日:10 hit、合計:138,091 hit

ep.22 ページ22

正門side

昨晩

「もぉおおお、誠也くんのアホ！なんで全力疾走すんねん！？アホちゃう？義足やで？ぎ！そ！く！」

文句たらたらなのに、動かす手は止めんのが流石の大晴。

「ごめんなぁ、大晴。直る？」

「直します！とりあえず、誠也くんは寝てください。あとは俺やりますから。」

申し訳なさそうな顔で小島とリチャくんに支えられながら、自分の部屋に戻る誠也くんが出てった後、晶哉が口を開いた。

「あんなに必死な誠也くん、初めて見ました。」

「そうやな。」

「あの、丈くん？って人、ここの出身ですよね？」

「そう。大体さ、親がおらん子はこの教会で育つんよ。俺や大晴もそうやし。お前みたいに割と大きなってから来るやつなんか珍しいからな。」

そう言うと、晶哉は昔を思い出したのか、少し表情を曇らせた

「俺、あんまりこの街のこと知らんから。みんなに拾われてから1年くらいやし、その、2年前の襲撃の事も知らんし。そんなんで、俺この街の役に立ててるんですかね。」

不安げな表情の晶哉の頭に手を置く

「立ててるよ。お前来てから誠也くん変わったし。リチャくんも明るくなったし。」

「そうやで。それに、誠也くんも晶哉の事頼りにしてるって言うてたで、この前。」

大晴も付け加える。

少しだけ明るくなった表情の晶哉に

「あんまり、細かいことは気にすんなよ。」

と言ってやったら、どこか納得したように晶哉は部屋を出て行った。

「珍しいな。晶哉があんなこと言うなんて。」

大晴は、手は動かしながらも、ちらりと俺の方に視線を向けた

「俺にはたまに、言ってくるんやけどね。まあ、晶哉も優しい子やからな。」

「...せやな。....傷、消えへんのかな。」

晶哉の身体中にある、おびただしい数の傷

切り傷

痣

火傷の跡

それが、いつ、どこで、どうやって付けられたものなのか

俺らは知らん

今まで晶哉はそれを明かそうとしなかったし。

俺らから聞く事もなかった。

人の心にはたくさんの傷がある

必死に蓋をしても、何かの衝撃で蓋が取れてしまったら

また、血は流れ出す

丈くん達もそんな感じなんかな。

2年前、俺らはまだ未熟やった。

役に立てんかった。

でも、今なら。

今なら、もう2年前みたいな悲しい結果にはさせへん。絶対に。