聞こえますか、この声が。 (ページ23)

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ep.23 ページ23

佐野side

『誠也くんも晶哉の事頼りにしてるって言うてたで』

つい数分前に大晴くんからかけられた言葉が、まだ頭の中をグルグルと回っていた

そっか。

頼りにしてくれてるんやな。

でも、俺は。

スラム街の端

人気のない廃墟の中で、彼は待っていた

スラム街には似合わない上質なスーツ。

滅多に手に入らない高級な煙草。

「晶哉。久しぶりやなぁ。」

「あなたの方から、直接会いにくるなんて珍しいですね。こんな所に。」

相変わらず、彼の表情は嘘ばっかりで。

もう何年も前につけられた傷が、こうして話している今も、抉られている気がする

「藤原丈一郎。」

彼の口から出た聞き覚えのある名前に思わず目を見開く

「....どうして。」

「なかなかに、生命力が強いらしい。」

くっくっと笑いながら、そう言った男の目は笑っていなかった

そうか。この人が。

点と点が線で繋がる

「さすが、ゴミ溜め出身って所だな。」

そう彼は呟くと俺の方に向き直った。

「晶哉。とりあえず、お前はアイツらを見張っていろ。」

「アイツら？」

「物分かりが悪いな。藤原と共に逃げてきた６人。それから、末澤たちもだ。」

2年前の黒幕もこの人か。

そうか。

全部、全部

俺が逃げたことも

全部計画の内

俺も「駒」の一つでしか無い。

「....ここは、俺の居場所や。

あなたの、思い通りにはさせない。」

「フッ、そんな震えた体で言われても、説得力のかけらも無いぞ。」

彼はニヤリと笑って

俺の方に近づいてくる。

逃げないと

そう思うのに

足は動いてくれへん

あっという間に壁際に追い詰められて

彼の口が俺の耳に近づく。

「忘れるな、晶哉。

お前は、私のものだ。」

その言葉と同時に

ジュッという音。肩に走る焼けるような痛み

「いっ...」

煙草の熱に皮膚が溶けていく

ケロイド状になった皮膚から、血が流れてく。

ああ、この痛みには、もう慣れてしまった。