聞こえますか、この声が。 (ページ34)

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ep.34 ページ34

なんか話さな。

そう、わかっているのに、震えた唇は、言葉を紡げない

信じてるよ

晶哉のこと。

そんなん、当たり前やん。

あんなどこの誰かも知らんような男の言葉より、俺は目の前にいる晶哉のことを信じるよ

「晶哉。」

さっきよりは震えずに言えた名前。

「帰るで。夕飯。遅くなったらまっさんが心配するやろ？」

それでも動かない晶哉を少し乱暴に立たせる

俺より、背の高い弟。

いや、教会のチビ達のことも、弟妹やと思ってるよ？

でも、晶哉は特別やねん。

守ってやりたい大事な弟。

「帰ろ。晶哉。」

腕を掴んで、合わない目に無理やり視線を合わせて。

「...どうして...。どうしてそんなに優しいん...。」

晶哉の震える唇から出てきた言葉は俺への言葉というより、晶哉自身を傷つけるような言葉で。

手をぎゅっと握ってやったら、弱々しく握り返してきて。

まだ、大丈夫。

直感的にそう思った。

「.....大晴くん。聞いて。」

そこで、やっと目があった。

その瞳は揺れてるけど、ちゃんと俺を写している。

出来るだけ優しいトーンで。

「何を？」

「あいつの目的は、この街を潰すこと。丸ごと。」

「...は？」

「あの人は、俺の父親。政府の長官。この国でTOP５に入るくらいの権力者」

たどたどしくて、息も荒くて、いつもの晶哉とはまるで違う。

でも、その真剣語られている真実に、自分を落ち着かせながら、なんとか耳を傾ける。

「でも、俺っ。この街が、好きだから。俺を救ってくれた場所だから。だから、ハァ、だからっ！」

どんどん、荒くなっていく晶哉の息に、どうすればいいかわからない。

でも、思わずその体を抱きしめていた。

「......大丈夫やから。」

まっさんだったら

リチャくんだったら

誠也くんだったら

小島でも

俺なんかよりは、もっとちゃんとした言葉をかけてあげられると思うけど

でも。

「......俺がおるよ。」

「.....みんなおるよ。」

「一人じゃないんやで、晶哉は。」

守るよ。

俺の大事な弟。