聞こえますか、この声が。 (ページ33)

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ep.33 ページ33

福本side

「いったー。もー、ほんま何やねん。」

今日に限って運が悪い。

趣味にもなってるジョギングを終えて、ひと息つきたかったのに、ゴロツキに囲まれてしまった。

まあ、別に怪我はせんかったけど。

「つっかれたー...」

廃墟の傍。

汗だくで、座り込む。

コツン

コツン

コツン

急に、聞こえてきた足音に驚く

これ以上、ゴロツキに囲まれるのはごめんや

慌てて、物陰に隠れると、足音の主は俺に気づかんまま、廃墟に入っていった。

もしかして、ゴロツキどもの溜まり場やったんかも。

アホやん。俺。

これ以上絡まれる前に帰ろっと。

遅くなったらまっさんにどやされるし。

そう思ったんに

『渡せるような、情報はこれしかない。』

廃墟の中から聞こえてきた聞き馴染みのある声は

「晶哉...?」

よく知った仲間のもので。

そっと壁の後ろから覗き込むと

知らん男と対峙する

晶哉

聞いてしまった真実に

息が止まった

『お前が裏切り者であるという事実は変わらないのだから』

裏切り者？

晶哉が？？

え、なんで？？

コツン

コツン

コツン

また、近づいてきた足音に、息を止める

去っていく後ろ姿は

俺たちとも

街のゴロツキ達とも

明らかに違う

黒のロングコート

綺麗に整えられた髪

アホな俺にもわかった

政府の人間や。

地面に座り込んで、虚ろな目で荒く息をする晶哉は、自分の知らん人みたいで

『大晴くん！！』

って、大型犬みたいに懐いてきてくれる弟分はどこに行ったんや

それとも、俺は勝手に知ってるつもりで

晶哉の事なんて、最初から知らなかったんか

答えなんてわからんけど

「晶哉......」

絞り出した、声は

アホみたいに震えていて。

「大晴くん....。」

俺の名前を呟いても、こっちを振り返らへん晶哉に、焦りの感情だけが湧いていった。