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エーミールさんは静かに私の言葉を聞いていた。ちらりとチップの山を一瞥して、ため息を一つ。ああ、まだ足りなかっただろうか。勢いで立ち上がったものの膝が笑う。私はこんな臆病者ではなかったはずなのに。
「Aさん、確かに随分と賢くなられたようですね？」
「…………」
「あのAさんがね……」
エーミールさんが椅子から立ち上がって目の前に立つ。心臓がうるさくて、そろそろどこか細い血管が切れてしまうのではないかとどこか他人事のように心配になった。わざとらしく顎に手を当ててエーミールさんが見下ろす。その唇は何を告げるだろうか。彼は、頷いてくれるだろうか。彼が吐いた溜息に肩がびくりと跳ねた。
「はぁ……私は賢い女性が好みだと思っていたんですがね……………」
「え……？」
「どうやらいつの間にか、馬鹿な人を好きになってしまっていたようですね」
「え、え……？な、なん、で………」
鋭い目と唇が柔らかく弧を描く。優しいその表情に反して告げられた言葉は鈍器が如く頭を殴りつけた。
賢い女性は、目指すことができる。勉強すればいいのだから。彼が賢い女性が好きだと言ったから、私は死に物狂いで勉強したのだ。だと言うのに！今更後戻りなんて出来やしない。エーミールさんだってそんなこと分かりきってるはずで、であるならば、これは拒絶の表明に他ならない。もう目の前にいるエーミールさんがどんな顔をしているかすら見えなかった。
「ふふふ、この二年全てを今日にベットしたのですか？」
「は、い……」
「本当に、馬鹿な人ですね」
「、へ？」
不自然な翳りに視線をあげると視界いっぱいにエーミールさんがいた。一瞬思考が全部飛んで、前後左右全てに触れている体温で漸く抱きしめられていることを察する。そうしたらまた思考が覚束なくなって、目の前にいるエーミールさんの顔は見たことも無いくらい嬉しそうな顔をしていた。そして咳払いを一つして、前髪を指でなぞる。
「私も、Aさんのことが好きです」
「……？？？」
「またよろしくお願いしますね」
なんだかもうキャパオーバーで、アメジストのような瞳を見つめることしか出来なくて、惚けていると彼の顔がゆっくりと近づいてきた。あれ、今、彼は、何を？そんな私を見て、やっぱり馬鹿ですね、とエーミールさんは笑ったのだった。
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野菜(プロフ) - 冬のみかんさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます！これからも「好き」と言っていただけるようなものをお届けできるよう2人で頑張りますね！ (2022年1月28日 9時) (
レス) id: 27822127af (このIDを非表示/違反報告)
冬のみかん - 初コメ失礼します。いつも見させていただいています！本当に好きです！これから続編の方でも頑張ってください！応援させていただきます！ (2022年1月28日 3時) (レス) @page2 id: b5169bd6bc (このIDを非表示/違反報告)
青条(プロフ) - 奏さん» コメントありがとうございます！イラスト素敵ですよね！お話読んでくださってありがとうございます。頑張って制作して参りますので気長にお待ちください……！ (2021年10月29日 21時) (レス) id: 3b14859680 (このIDを非表示/違反報告)
奏 - ぇイラストかっこよ。お話だけでも最高なのに!これからも作者様のペースで頑張ってください! (2021年10月29日 19時) (レス) id: 00420758bc (このIDを非表示/違反報告)
野菜(プロフ) - ラグさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです！ (2021年10月9日 19時) (レス) id: 5520a4b1a9 (このIDを非表示/違反報告)
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