▲ホンモノ ページ24
「エーミールさん！トリックオアトリート！！」
「はい、ハッピーハロウィ…………」
日がもう随分と短くなった10月最後の日。ずっと前から準備していた衣装に身を包みエーミールさんを背後から呼ぶ。エーミールさんはまるで私が来ることを知っていたように、特に驚きもせず口を付けていたティーカップを下ろすとゆっくり振り返り、そこで動きを止めた。
「似合ってますか？」
「Aさん、その格好…………」
エーミールさんが衣装を舐め回すように見つめる。
一番上まで釦を止めた薄茶のシャツ、白いラインの入った細身のベスト、足元まで靡くワインレッドのロングコート、動きやすく大人びたグレーのスラックス、そして、チェーンが光るモノクル。
くるりと回って見せるとコートの裾がふんわりと広がった。
「ふふふ……世にも恐ろしい敏腕武器商人の仮装です。あ、仕込み杖は拝借しました」
「いえ、そんなことはどうでも……それ、わざわざ自分で仕立てたんですか？」
「当たり前でしょう！凡事徹底が私の哲学ですから！」
止めなさい。少し顔を赤くしたエーミールさんが頬を抓る。ギリギリと持ちうる握力を全て使って頬を絞められる。その力が思ったよりも強くて慌てて謝罪をするとエーミールさんは案外あっさりと離してくれた。でもこれは絶対に赤くなったと思う。お揃いになってしまった頬を抑えて、コートを羽織り直して、もう一度エーミールさんを見て、力強く手を前に出した。
「ほら早くお菓子を出してください。私はイタズラでも手を抜きませんよ？」
「…………座って待ってなさい。紅茶を淹れてきます」
「えっあ、はい……」
椅子を強く指さしてキッチンに向かうエーミールさんを見つめる。怒らせてしまっただろうか。てっきりもう一度、止めなさい！と照れたような叱責が飛んでくると思っていたのに、それを最後にからかうのはやめようと思っていたのに、予想に反しエーミールさんは静かに背を向けてしまった。
しつこかったかも。一回で止めればよかった。
頭の中で反省会をしながら大人しく言われた通りに座って待つ。ちらちらとエーミールさんの顔色を覗き窺っても瞳は鋭く、口は真一文字に引き結ばれていて決して良い状態とは言えない。膝の上の手がじっとりと湿度を持った。
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野菜(プロフ) - 冬のみかんさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます！これからも「好き」と言っていただけるようなものをお届けできるよう2人で頑張りますね！ (2022年1月28日 9時) (
レス) id: 27822127af (このIDを非表示/違反報告)
冬のみかん - 初コメ失礼します。いつも見させていただいています！本当に好きです！これから続編の方でも頑張ってください！応援させていただきます！ (2022年1月28日 3時) (レス) @page2 id: b5169bd6bc (このIDを非表示/違反報告)
青条(プロフ) - 奏さん» コメントありがとうございます！イラスト素敵ですよね！お話読んでくださってありがとうございます。頑張って制作して参りますので気長にお待ちください……！ (2021年10月29日 21時) (レス) id: 3b14859680 (このIDを非表示/違反報告)
奏 - ぇイラストかっこよ。お話だけでも最高なのに!これからも作者様のペースで頑張ってください! (2021年10月29日 19時) (レス) id: 00420758bc (このIDを非表示/違反報告)
野菜(プロフ) - ラグさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです！ (2021年10月9日 19時) (レス) id: 5520a4b1a9 (このIDを非表示/違反報告)
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