・ ページ17
エーミールさんが完全に寝入っていることを確認して、横抱きのようになっていた状態から足を伸ばし床に下ろす。起こさないようにそっと体を捻って、力の抜けた腕が重力に従い落ちるのを利用してエーミールさんの上をそっと抜け出した。
あとは右手を外すだけ、そんな折その残った右腕が強く胴体を引っ張り、今さっき脱出した場所に強制的に戻され一度外した左手はおろか、足までもが絡みついてぎゅうと締め付けた。
「どこに行くんですか」
まだふわふわ夢と現を彷徨うような声音。加減できないのか、その細身のどこに隠し持っていたんだという怪力でギリギリと抱きしめる。その目は開ききっていないのに正確に唇やら耳やらにキスを落とされた。
「どこにも行かないでください」
「え、や、あの……エーミールさん？」
「好きなんです。傍に居てください。どうすれば貴女を繋ぎ止めておけますか」
形の良い唇から聞いてるこっちが恥ずかしくなるようなストレートな言葉達が紡がれる。ぽっかり空いていた虚をその言葉達が埋めていく。真っ赤になっているであろう私と目が合うとエーミールさんは見たことがないくらい柔らかく、優しく笑った。
「かわいい」
「〜〜〜〜〜！もう、お腹いっぱいです！！」
寝ぼけているエーミールさんがこんなに危険な人だったなんて。計算を取っ払った言動全てが心臓に突き刺さった。これが普段なら、照れ隠しに抵抗すれば彼はすぐに察してやめてくれるのに、今の彼にそんな能力はない。結果心臓が破裂しそうな程拍動しているのに、ハグのキスのも止めてはくれなかった。羞恥に涙が浮かび始めたころ、エーミールさんは再びすやりと眠りについた。私を抱きしめたまま。私は彼を適度に休ませることを心に誓った。
数時間後、再び目を覚ました彼が真っ赤な顔で謝罪してきたのはまた別のお話。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 134人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
野菜(プロフ) - 冬のみかんさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます！これからも「好き」と言っていただけるようなものをお届けできるよう2人で頑張りますね！ (2022年1月28日 9時) (
レス) id: 27822127af (このIDを非表示/違反報告)
冬のみかん - 初コメ失礼します。いつも見させていただいています！本当に好きです！これから続編の方でも頑張ってください！応援させていただきます！ (2022年1月28日 3時) (レス) @page2 id: b5169bd6bc (このIDを非表示/違反報告)
青条(プロフ) - 奏さん» コメントありがとうございます！イラスト素敵ですよね！お話読んでくださってありがとうございます。頑張って制作して参りますので気長にお待ちください……！ (2021年10月29日 21時) (レス) id: 3b14859680 (このIDを非表示/違反報告)
奏 - ぇイラストかっこよ。お話だけでも最高なのに!これからも作者様のペースで頑張ってください! (2021年10月29日 19時) (レス) id: 00420758bc (このIDを非表示/違反報告)
野菜(プロフ) - ラグさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです！ (2021年10月9日 19時) (レス) id: 5520a4b1a9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
