【em】茶色の裏表紙はまだ【合作企画】 (ページ34)

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暫くして、百本目の薔薇が枯れた。そして、エーミールさんはまるで夢だったかのようにとんと来なくなった。まだ短くとも、連れ添った恋心は未だに枯れていないのに。

「つまんないの」

エーミールさんの話の方が面白かった、と惰性で見ていたテレビのリモコンを投げ捨てる。すると、無機質なチャイムの音が部屋に響いた。面倒臭いけど、行かなければ。
「はーい」と返事をしてドアスコープを覗くと、そこにはスーツを身にまとい厳格な様子で佇む男性。

「エーミールさん…」

それは彼に酷く似ていて、思わず扉を勢いよく開けて抱き着きそうになった程。だがそんな訳もなく扉を開けると、「いきなり失礼します。警察の者ですが」とエーミールにそっくりな男が言う。

「つい半年程前のこのマンション付近で起きた爆破事故について、何か知ってることはありませんか？」
「…ありません」

ちょうど彼と出会った日だ、と埃を被りかけていた思い出を思い起こす。ただただ辛くて、警察の話も右から左へ流れていった。

「体調が優れませんか？」
「あ…いいえ、大丈夫です。こんな所でお話するのもなんですし、奥へどうぞ。」

部屋へ通して紅茶を淹れ、警察の前の椅子に腰をかける。

「当時なにか怪しい人物を見かけたりとかは？」
「…無いです」
「本当ですか？」
「はい。」

「秘密です」と言う彼の姿が浮かんで、知らぬ存ぜぬを突き通そうと手を固く握っていると、その警察は安堵したように軽くため息をついて、持っていた手帳を机に置いた。