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「……また、夢ですか？」
「昨日ぶりですね」
夢のようで夢では無かった出来事は今日、再び訪れた。今度はベランダの窓を叩いて、丁寧に挨拶をしてから。格好は昨日と同じだが、モノクルは綺麗に修復されている。
「何でここに？」
「誰にも言っていないかなぁと思いまして」
「言ってませんよ、安心してください」
「…薔薇、飾ってくれているんですか？」
「あ、気付きました？綺麗なので、折角ならと思って」
「…明日、また持ってきますね、薔薇」
「明日も！？」
「ひとりで寂しそうなので」
その「ひとり」は薔薇の事なのか、それとも私のことなのか。Aは少しの間考えた。が、なんだか虚しくなってきたので途中で辞めた。
「…あの、そういえばお名前をお聞きしたいんですが」
「え、ああ！Aです、よろしくお願いします。」
「Aさん…私はエーミールと申します」
「エーミールさん…は、普段からその格好を…？」
「そんな訳ないでしょう！？普段は普通の社会人をしていますよ…！」
「じゃあその格好は…」
「それは…秘密です」
「また秘密ですかぁ…じゃあ趣味は？」
「それも秘密ですかね…」
「また！？」
頑なに自分のことを話そうとしないエーミールに、Aはいつの間にかムキになって色んな質問を投げかけるが、全てのらりくらりと躱されてしまう。だけれど、時間を忘れてしまう程に彼との会話は楽しかった。
「さて、そろそろいい子は寝る時間ですよ」
「もう行っちゃうんですか？」
「おや、寂しいんですか？」とエーミールがからかい混じりに言う。
それに少し気恥しくなったAは「そういうのじゃないです。つまんないなぁって」と返した。
「明日も来ますから」
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