22話・サイレンが鳴り響く ページ22
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サイレンが鳴り響いている。
赤いライトが点滅する白い車の二台、救急車とパトカーからだ。学校の敷地内で見かけるなど、日常ではありえないことで生徒の皆がわらわらと集まってくる。
「なんだなんだぁ?おい、仗助!来てみろよ!」
「億泰。お前ほんと…はぁ。行くから待ってろ」
東方もそのうちの一人…というより、友人である億泰に無理やり付き合わされた様子だった。実際に東方は目の前の騒ぎよりも意識は屋上の方へ向けられていた。
「(Aを探しに行こうと思ってたのによ…昼も珍しく見かけねぇし。どこいったんだよ)」
Aが救いの手を取ってくれたあの日。お互いに行動しようと決めたというのに。いや、厳密にいえば決めたというより自分はそのつもりだったのだが…
昼休みの集合場所といえば屋上で、そこに行ってみたがいなかった。放課後にもう一度行って探すかと決めていたが、億泰に捕まってしまった。
ガヤガヤと多くの生徒が騒ぎながら一心に何かを見つめている。その群衆を掻き分けていく億泰に渋々ついていきながら東方はAがいないか見渡していた。
「おっ、見えたぞ仗助!ってありゃあ…」
「ってぇな。急に立ち止ま…るな…_____は?」
億泰の硬い背中に鼻をぶつけて文句を言おうとしたが、口からは文句の言葉は出てこない。それよりも騒ぎの原因になっている光景に視線を奪われた。
救急隊員が忙しなくタンカーを運んでいる。その上に乗せられている少女はぐったりとしていた。そして、タンカーからぶら下がった腕の先にある手首。赤い血がとめどなく流れており、地面を汚していく。
「〜ッ離してよ!私は何も悪くない!!悪くないって言ってんでしょ!?」
その奥で、警察官に拘束されているのは見覚えのある女子生徒の姿。Aを苦しめている主犯の女だった。その手にはカッターナイフが握られており、すぐさま警察に取り上げられていた。それでも暴れることをやめずに声を荒げながら叫んでいた。
「あいつが!あいつが私の親を殺したんだから!!だからやり返してやっただけじゃない!!あいつが罰を受けるべきでしょ!?ねぇ!?聞いてるわけ!?くっそ、邪魔すんな!今すぐッ今すぐ殺してやる゛!!A゛!!」
女の叫びに東方は静かに耳を傾けていた。そして、最後の言葉で確信した。
タンカーに乗っているのは、手首からおびただしい血を流しているのは、真っ青な顔で硬く目を瞑っているのは…
「ーッA!!!」
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圧倒的睡眠不足(プロフ) - 知らず知らずのうちに完結されていらっしゃる...だと...ッ!?流れから文の書き方からオチまで全部素敵すぎて引き込まれてしまいました!素敵な作品をありがとうございます! (5月7日 17時) (レス) @page32 id: 33f559404d (このIDを非表示/違反報告)
匿名M(プロフ) - 圧倒的睡眠不足さん» コメントありがとうございます!前作も読んでいただき、今作まで…本当に嬉しいです!めちゃ良きなストーリー展開を続けられるよう頑張ります! (11月19日 22時) (レス) id: 0253a37101 (このIDを非表示/違反報告)
圧倒的睡眠不足(プロフ) - 前作ジョルノの小説も読ませていただいてました、新作もめっちゃ良き…!更新楽しみにしてます! (11月19日 13時) (レス) @page3 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名M | 作成日時:2023年10月27日 10時