１５話・親の罪 ページ15
「消しちまえばいい。何もかもな」
実の父だというのに娘に対して手加減などない。そんな慈愛はどこかに置いてきてしまった人だ。
父は投げ捨てるようにAの首から手を離した。床に倒れ込み、咳き込む彼女を見下ろす。
「理解できんな。何故お前が苦しむ？お前は上に立つべき人間だ。俺の血を引いてる限りな」
「…」
「はぁ…分かってんだぞ。あの忌々しい小娘にやられてることぐらい」
胸ポケットから取り出した一枚の写真にAは釘付けになった。そこにはいじめの加害者のあの子が写っていた。
「いつまでも善人ぶるな。お前は"こっち側"の人間だ」
「〜ッその子に手を出さないで！！」
「おいおい、庇うのか？"あいつ"の娘だぞ。あ゛ー、くそ。思い出しただけでも腹が立つ」
父は脳裏に浮かぶ男の顔を浮かべて額に青筋を浮かべる。その目は血走っていた。
「取り立てたってちんけな金しかもってなかった。それどころか多額の借金をして返せないと言いやがって逆恨みに俺の腹を刺しやがったんだぞ！？お前も目の前で見ただろ！」
そうだ。ちょうどこの家で、この場所で起こった。逆上した男が父の腹に向かって包丁を刺すところを。だが、父は致命傷にならずそのナイフを逆手に取って…
「過去最高に腹が立つ顧客だったよ。まぁ、その分きっちり落とし前はつけさせてもらったんだがな。あいつが持ってたナイフを奪ってズタズタに刺し返せば…ハッ、あいつの間抜けな表情たまんなかっただろ？」
何十年前の話。されど、昨日のことに思い出せるのはそれだけ残酷な出来事だった。だが、父にとっては愉快な思い出だという。
「裏社会の借金とりに逆らう奴は馬鹿だ。俺を誰だと思ってやがったんだ、あいつは。それで…そいつの娘もだいぶ馬鹿らしい」
父はAに優しい笑みを浮かべる。そして、怯えて震える娘を抱きしめた。
「俺の大事な娘をいじめるとは。お父さんが代わりに仕返してやろうか？なに、お前と違って上手くやる。また刺し殺したって金で解決できる。A…俺がお前を守ってやるさ、どこまでも」
そう耳元で囁く父の目的は娘である私を守るためでもなんでもない。ただ、人を痛ぶりたいだけの暴力装置だ。
Aは父の突き飛ばして腕から逃れる。だが、そうすることを分かっていたように父は驚く様子を見せない。
「甘ちゃんだな。なぁ、お前はいじめを受けて自分を罰してるつもりか」
「ッ！」」
「図星か。まぁ、親の罪はお前の罪でもあるからなぁ！？」
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圧倒的睡眠不足(プロフ) - 知らず知らずのうちに完結されていらっしゃる...だと...ッ！？流れから文の書き方からオチまで全部素敵すぎて引き込まれてしまいました！素敵な作品をありがとうございます！ (5月7日 17時) (
レス) @page32 id: 33f559404d (このIDを非表示/違反報告)
匿名M(プロフ) - 圧倒的睡眠不足さん» コメントありがとうございます！前作も読んでいただき、今作まで…本当に嬉しいです！めちゃ良きなストーリー展開を続けられるよう頑張ります！ (11月19日 22時) (レス) id: 0253a37101 (このIDを非表示/違反報告)
圧倒的睡眠不足(プロフ) - 前作ジョルノの小説も読ませていただいてました、新作もめっちゃ良き…！更新楽しみにしてます！ (11月19日 13時) (レス) @page3 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名M | 作成日時：2023年10月27日 10時
