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11話・見過ごせない ページ11

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昼休み。最近、自分の足は教室ではなく、屋上へ向かうのはある人物に会うため。

扉を開けて視界の先に佇む華奢な背中に東方は声をかけた。

「せんぱい、"また"濡れてるじゃないですか」

その一声で顔を歪めるのをやめてほしいと東方は不服に思いながらAの姿を見つめた。

お互いに不愉快になるだけなのにまた来たのか…と言いたげな表情を無視して彼女の元へ歩み寄る。チラリと手首に目をやって傷がないことを確認し、少しばかり安堵した。

「よっと」

フェンスにもたれて座ったAに合わせるように東方も隣に座り込む。チラリと目線を彼女に向けて"何故か"ずぶ濡れな姿に眉を顰めた。

「雨でもないっつーのに濡れてくるのはなんなんすか」

「さぁ、なんでだろうね」

「いい加減、はぶらかすのやめろよ」

誰かにかけられたのは明白だというのになぜこの人は曖昧な答えしか言わないのだろう。吐き出した方が楽になれるというのに。

「何かけられたんすか?…ってこの匂い」

ツンッと鼻につくアンモニアの汚臭がした。それを察したかのように「糞かしょんべんの匂いでもする?」と平然というAに東方は顔を歪めた。

「…なんであんたはいいようにされてんすか」

脳裏に浮かんだ想像は便器に顔を突っ込まれる彼女の姿。もしこれが合ってしまっている出来事なら…不可解だ。耐えがたい屈辱を受け入れている彼女の心境が。

「分からないって顔してるね。でもね、私もあなたのことよく分からない。だって、こんな私にわざわざ近づこうとする理由が」

普通だったら厄介ごとに巻き込まれたくないとなるでしょ。という彼女に東方は「今は俺じゃなくてあんたの話をしてんだよ」と返し、ポケットからハンカチを取り出して渡す。

すると、目を見開いては「あなたはそういう人だった」と少しばかり柔らかくなったAの表情に東方は歯を食いしばった。

「もっと怒るべきだろ。それなのにあんたは抵抗してないの何か理由でもあるのかよ」

「別に教えるつもりもない」

「どんな理由があろうともそこまでされて黙ってるなんてな」

煽るようなことをいって焚き付けようとしても彼女の心は動かない。「あなたとは考え方が違うの」そんな他人事のようにいって。

東方は耐えられずにその場から立ち上がり、Aに向かって声を荒げた。

「〜ッ今まで黙ってたけどよぉ、流石に今回は見過ごせねぇだろ!?俺があんたをそんな目に遭わせてる奴に直接言ってきてやる!」

12話・主犯格→←10話・愚かな行為



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圧倒的睡眠不足(プロフ) - 知らず知らずのうちに完結されていらっしゃる...だと...ッ!?流れから文の書き方からオチまで全部素敵すぎて引き込まれてしまいました!素敵な作品をありがとうございます! (5月7日 17時) (レス) @page32 id: 33f559404d (このIDを非表示/違反報告)
匿名M(プロフ) - 圧倒的睡眠不足さん» コメントありがとうございます!前作も読んでいただき、今作まで…本当に嬉しいです!めちゃ良きなストーリー展開を続けられるよう頑張ります! (11月19日 22時) (レス) id: 0253a37101 (このIDを非表示/違反報告)
圧倒的睡眠不足(プロフ) - 前作ジョルノの小説も読ませていただいてました、新作もめっちゃ良き…!更新楽しみにしてます! (11月19日 13時) (レス) @page3 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:匿名M | 作成日時:2023年10月27日 10時

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