■23:EMPTINESS[空虚] ページ23
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「(…苦しい)」
息苦しい。自分の周りだけ酸素が無くなっているみたいだ。
『気遣い=優しさ』ではない。俺にとっては皆の優しさが、心臓に刺すような痛みを与える凶器でしかない。その優しさが、軟らかい刃となって隙間だらけの俺の心に突き刺さる。
抜こうとしても抜こうとしても、軟らかいせいで上手く抜けない。壊そうとしても壊そうとしても、軟らかいせいで上手く壊れない。苦しい。痛い、痛いよ。だんだんハッキリと目に見えてきた皆との境界線。壁。勿論幻覚に決まっている。だけど、けど。
きっと俺は、今まで人を拒絶して自分が正義に値しない事を知らない様にしていたんだ。勿論表面上正義ではない事はわかっていたけど、心の奥では自分を「悪ではない」とも思っていた。
でも『悪』なんだ。正義と悪に中立の立場なんてのはない。圧倒的正義から向けられた俺への憐れみにも見える優しさ。それが、俺と皆の距離を浮き彫りにさせた。いや別に、最初から近しくなろうとは思ってないけど。“違い”が、空虚感が。こんなに寂しいものなんて。
あれ、息ってどうやってするんだっけ。息が出来ない。吸って吐く？ 吐くってどうやってやってた？ あれ？ 呼吸するって、脈を打つって、生きるって、どうやってやってるんだっけ。
苦しい。苦しい苦しい苦しい。息が吐けない。
吸わなきゃ、息。空気、肺に入れないと。早く。吸わなきゃ。
「龍兎？」
承太郎の落ち着いた低音で我に帰る。我に帰ったは良いものの、依然、いや先程より増して呼吸が上手く出来なくなった。意識して余計呼吸のリズムが崩れる。ヒュッ、と自分の喉から出たとは思えない、空回った音が耳に届く。
これが俺の吐息？ 呼吸音？ 嫌だ、死にたくない。俺はまだ──…。
「ヒュッ、じょ……じょ、ハッ、ヒュ……は、ハッ…は、ぁ…」
「…龍兎？ …ゆっくり息を吸って吐きな。吸って吐け」
「くら、い、見えない…ハッ、はぁ…あっ…くるし、い」
「とにかく息だ。落ち着け、らしくねーぜ」
目の前が暗くなっていく。指の先が痺れてきた。めまいがする。きっと酸欠なんだ。承太郎の指示に大人しくしたがって、思い切り口を開けて酸素を吸い込み、思い切り吐く。始めは上手くできなかったが、承太郎が背中を擦ってくれたお陰で呼吸のタイミングが掴めた。息が正常に戻るに連れて、軽くパニックに陥っていた脳も冷めていった。
俺がひとりで過呼吸になっている内、事はもう済んでいた。
■24:HONG KONG[香港]→←■22:TONGUE[舌]
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カレーライス(プロフ) - 鼎さん» ありがとうございます！ そう言ってくださると、モチベーションが上がって書くのが楽しくなります！ これからもよろしくお願いします！ (2019年11月26日 21時) (
レス) id: 62819c8559 (このIDを非表示/違反報告)
鼎(プロフ) - すっごい面白いです…一気読みしてしまいました…！更新はご自分のペースで無理をなさらない程度に頑張ってください...！ずっと応援してます！ (2019年11月25日 7時) (レス) id: 7b1eca840c (このIDを非表示/違反報告)
カレーライス(プロフ) - ASTEさん» ありがとうございます！ 頑張ります！ (2019年8月16日 12時) (レス) id: 62819c8559 (このIDを非表示/違反報告)
ASTE(プロフ) - めっちゃ好きです！！！更新頑張ってください！！！ (2019年8月15日 19時) (レス) id: 2389d4e467 (このIDを非表示/違反報告)
カレーライス(プロフ) - ツティスさん» 感想を言って頂けて嬉しいです。これからも、龍兎たちをどうぞよろしくお願い致します！ (2019年8月10日 16時) (レス) id: 172c2d6dd4 (このIDを非表示/違反報告)
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