とある家族の話 11 ページ39
鴉を呼び、大病院に連れて行かれたA。
血溜まりができていた血液を回収しそれを傷口を縫ってもらった後に飲み込んだ。
医者「無茶すると、血がなくなるぞ」
『……はい』
医者「そのまま大天狗様に顔見せてやり、
大天狗様はお前の帰りをずっと待っているんだから」
『わかりました』
全身傷だらけで、ここにやってきた時には自力で歩けないほどに疲労していた。
鴉たちが鴉天狗を呼び病院に連れていった経緯は、大天狗様には今だに報告されていない事。
全身が軋む、体内電気を浴びせられたからだ、きっと麻痺してる。だから思うように動かせない。
『……。』
飯をあまり食べていないからというのもあるかもしれない。
必要な栄養すら足りないから血液も作られない。
それよりも、だ。
自分の体よりも、今は…
『…あれは、化けるぞ』
奥様と、旦那様の能力を引き継いだあの御子息様であれば、きっと、妖怪と人間、どちらも救える。
俺ができないことをあの方はしてくださる。
きっと、旦那様はこれをしたかったのだ。
自分や、奥様、旦那様ができなかったことを
自身の息子にやらせたかった。
ああ、時代が変わるぞ。
腐っている日本の時代が変わる！！
瞳を手で隠し控えめに笑うと一筋涙が頬を伝った。
『はは、ひひ…っ……！！』
歯を食いしばり、血が滲むほどの力を込めながら静かに泣き始めた。
鼻水をすする音だけが病室に響き渡った。
悔しくて、悲しくて、自分の無力さを痛感した。
自分は守る側ではなく、結局は守られる側だったということが、ここではっきりとわかったからだ。
線を引かれた。
消えない線。
嗚呼、強くなりたい。
御子息様のように、強くなりたい。
いまだに痺れる足を叩き地面に足をつけた。
タイルが冷たく、ペタペタと音が聞こえる。
窓の外を見ると鴉天狗達が飛び去っていた。
両方の立派な翼を広げて広大な空めがけ飛んでいた。
ああ、羨ましいなど思っていない。
逆に、使い物にならなくなってしまった翼はきっとこれから生きていくには使えない方が良いのだろう。
それに、まだ俺は飛べる。
まだこの空を自由に旅できる。
でももう時間はない。
自由に旅している時間など、今はもうないのだ。
水木様、旦那様、御子息様。
先に俺は行って参ります。
嗚呼、水木様。
貴方様と次お会いする日は、きっと木造でできたボートの上でしょうか。
楽しみでございます。
時代が変わっても、貴方様は変わらず、生きてください。
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わーい - ひあのさん» 返信遅くなり誠に申し訳ありません。ありがとうございます！早く完結できるよう頑張ります！ (12月13日 8時) (
レス) id: caa96760da (このIDを非表示/違反報告)
ひあの(プロフ) - めっちゃめっちゃ面白いです！！更新楽しみにしています！！！！ (12月8日 7時) (レス) @page4 id: 426f9a3d0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わーい | 作成日時：2023年12月7日 8時
