きみはぼくのベアトリーチェ ページ12
いつの間にか空は濃紺に染まっていて、白い光がちらちらと瞬いている。
迅は遠くを睨みつけながら歩くAの半歩後ろを歩いていた。迅の前では初対面から何かにつけて笑みを浮かべていた(それがニヤニヤの含み笑いだったにしろ)Aが、めずらしく笑みを浮かべていなかった。ただ冷たく遠くを睨んでいるのであった。
迅はそろりと彼女を見上げた。どう話しかけようか迷ったとき、むしろあちらから声がかけられる。
「なんだい、悠一君」
「あっ、いや……家も遠くないし、ここらでもう大丈夫です」
「悪いけど、送られてくれ。まだ七時にもなってないとはいえ暗いから」
「……じゃあ、お願いします」
会話はそこで途切れたが、しかしAの冷たい目は消え去って眼光にあたたかさが戻ってきており、目が合えば優しく微笑んでくれる。
迅がほっとして彼女の隣に並んで歩くと、彼女が不意に口を開いた。
「今日、城戸さんにどこまで教えてもらった？」
答えは「どこまでも」だった。たぶんほとんどのことは教えてもらったであろうし、教えてもらっている最中に視えた未来からも多くの情報が得られた。異世界のような場所で、戦っている未来が視えた。あれは城戸さんが言う『
それをそのまま伝えると、Aは「そうか」と言って目を伏せた。顔は憂いを帯びていて、迅は何かまずいことでも言ってしまったろうかと焦る。Aは、迅には知られたくなかったのかもしれない。
迅は少し考えて、Aの正面に立つ。Aは軽く目を見開き、歩を止めた。
「あのさ」
「うん」
「ボーダーに入るって言ったのは、おれの意思だよ。あんま責任とか感じないで」
Aは顔を歪めた。
「全部視えてたよ。小南と戦う前に、ボーダーが
「…………わたしは、君を利用しようとしているんだよ。わかってる？」
利用。どうもしっくりこないその言葉の響きに、迅は首を傾げる。
Aが説明した。最年少の小南に遊び相手を与えたかったという事情と、迅の『未来視』という力を味方につけたかったという事情と、単純に兵士が必要だったという事情とが複雑に絡み合い、そのために迅を巻き込んだのだと。そして言った。「君はかわいそうだね」
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ノア(プロフ) - Noahさん» あいしてます (2021年9月21日 17時) (
レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 金の帳さん» ありがとうございます。迅さんカッコいいですよね！ 続編もよろしくお願いします。 (2021年9月21日 17時) (レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
Noah(プロフ) - すきです (2021年3月20日 2時) (レス) id: 3eb26abe40 (このIDを非表示/違反報告)
金の帳 - めっちゃおもしろいです！迅さんはやっぱりかっこいいですね！更新楽しみにしてます！ (2021年2月8日 23時) (レス) id: 1e8abd378d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ノア | 作成日時：2021年2月7日 10時
