大人の話 ページ11
ふう、と吐けばゆらゆら揺れる鼠色の煙が融ける。
わたしがタバコを吸い始めたのはついこの間のこと。誘われて一本吸い、それからもなんとなく吸い続けている。わたしはほぼトリオン体で過ごすため、まだ本数も少ないし依存しているわけでもないのだけれど。
「聞いているのか今給黎！」
「ん？ ……あー、聞いてますよ」
「聞いてなかったな。林藤、お前がこの子に煙草を教えたから……」
「まあまあ忍田、落ち着けって」
忍田さんはわたしが悠一君を連れて来たことを怒っている。逆の立場だったとしたらわたしも怒っていただろうから、わたしは何も言えず黙っているだけ。しかし面倒だから聞き流している。
忍田さんにとってはわたしさえも子どもらしく、初対面で「大学生です」と名乗ったというのに「この
もう一度煙を吐く。わたしはもう大人になった。それはつまり子どもを護る立場にあるということ。だのにわたしは一人子どもを危険へと連れこんでしまった。それも、特別危うい子どもを。
「＿＿＿あの子、たぶん
「……何？ 未来視だと？！」
「ええ。じゃんけんで二十回あいこになりました」
「それはすごくどうでもいいな」と感心しながら頷く林藤さん。彼は結構ゆるい人で、忍田さんとは同輩らしいけど、性格は真逆だ。
悠一君がSE持ち、しかもそれが未来視かもしれないと知るや、大人たちは騒めきだした。当然だろう。未来視なんてものが実際にあるのならば、あちらの戦争の状況だって変わるかもしれない。それくらい希少かつ強力な能力である。
忍田さんは、桐絵ちゃんと一緒に悠一君にボーダーについて教えている城戸さんを見た。忍田さんはお人好しがすぎるところがあるから悠一君をなるべく危険から遠ざけようとするだろうが、城戸さんはどうだろうか。城戸さんも優しいことに変わりはないけど、子どもの意思を尊重するきらいがある。
忍田さんはため息をついた。
「今日はもう遅い。あの少年も流されているだけかもしれないし、まずは一度帰らせよう」
「それじゃわたしが送るよ。連れてきてしまった責任がある」
「……おれも忍田も、お前の気持ちをわかってるさ」
「そう、ありがとう林藤さん」
返事がそっけないことに気がつきながらも、わたしは訂正もしなかった。ただ上着を取り、刺さる視線に背を向け、「悠一君」と呼びかける。もう一度、忍田さんのため息が聞こえた。
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ノア(プロフ) - Noahさん» あいしてます (2021年9月21日 17時) (
レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 金の帳さん» ありがとうございます。迅さんカッコいいですよね！ 続編もよろしくお願いします。 (2021年9月21日 17時) (レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
Noah(プロフ) - すきです (2021年3月20日 2時) (レス) id: 3eb26abe40 (このIDを非表示/違反報告)
金の帳 - めっちゃおもしろいです！迅さんはやっぱりかっこいいですね！更新楽しみにしてます！ (2021年2月8日 23時) (レス) id: 1e8abd378d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ノア | 作成日時：2021年2月7日 10時
