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冷たい。心地好い。

人間は人の腹にいる時水のようなものに浸かっていると聞いたけれど、それはこんな感覚なのだろうか…。


あぁ、なんてそれは__



(羨ましいんだろう)



ゆっくりと目を開けば、赤が広がる。


あの日と同じだ。


あぁ、でも、違う。


あの日は、もっと__





肌に空気が触れた。


瞬間感じるのは、纒わり付くような視線。


視線の方向へ顔を向けると、微笑んだ鬼灯がいた。

つくづく腹の立つやつだ。アレが人間ならミンチにして美味しく調理してあげるのに。


…あぁ、アレは調理する側か。



溜息をつきそうになったところで、少年がこちらを見ているのに気がついた。


銀髪に、黄色のような、黄土色のような…。

少し、不思議な目をしている少年。


(虎の子か…。)


鬼灯から視線を逸らし、虎の子へと視線を移す。


「…だ、大丈夫ですか…?」


虎の子は不安そうに言った。

彼はどこの誰ともわからない私を心配しているのだろうか。

なるほど、とても良い心の持ち主だ。



「さぁ?どうでしょうね。」


自分の体を見ても目立った外傷はない。

たまに川に流れているゴミで怪我をするのだが、今回はそれも無かったようだ。


虎の子の「えぇ…」という声を無視し、太宰様を蹴る。


「太宰様。起きてください。お仕事です。」


どうやらみぞか何処かに「くりーんひっと」したらしく、「うぅ…」と呻き声をあげた。




「えっちょ、川を流れてたんですよ!?

なのにそんな起こし方…!」


虎の子は本当に優しい心を持っているらしい。


こんなどう考えても屑で仕事も出来なさそうな稚海藻野郎の体の心配までするとは。


「御心配無く。いつもの事なので。」


これは最後まで言えたのだろうか。否、言えてはいるが聞こえていはしないだろう。


何故か?先程まで地面に寝そべっていた太宰様が起き上がったからだ。


入水だの助けるなだの言っている。他人に迷惑をかけない?私はかけられているんだが。


まぁ放っておこう。どうでもいい。あの視線の方がうざったい。



もう一度鬼灯に目をやると、今度は不満そうに見られた。何なんだこいつ。


ぴょんっと鬼灯が飛ぶ。

結構すごい音がした。重いのだろうか。


少し足を痛そうにしている。


…痛いなら橋から飛び降りるなんてしなければいいのに。



「はじめまして、ですね。少年。」


虎の子が大きく目を開く。


彼女の登場に、また仕事がやりにくくなると溜息を漏らした。

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華の幽霊《sgsyu》(プロフ) - 淋さん» コメントありがとうございます。普ちゃんの文才は本当に素晴らしくて、私も参考にさせて貰っているところがいくつもあります。応援ありがとうございます。普ちゃんと共に頑張っていこうかと思います。 (2018年4月1日 20時) (レス) id: db4eb032b8 (このIDを非表示/違反報告)
- どうでもよいお話ですが或るボカロ曲を連想しました…それだけです(*´ `) (2018年4月1日 20時) (レス) id: 350a847f52 (このIDを非表示/違反報告)
- 初コメ失礼。とても善い作品ですね、読んでいて楽しく面白いです。普さんの作品経由で来たのですけど、やはり素晴らしい文才です。これからも頑張って下さい、応援します (2018年4月1日 20時) (レス) id: 350a847f52 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:華の幽霊と普 | 作成日時:2018年3月31日 19時

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