百六十八歩 ページ40
｢観客席にいたらラギー君達が忙しそうにしてから、何かあったのかな？って…データ吹っ飛んだんだって？｣
｢そうなんスよ、機材は何も異常無いのにデータだけが綺麗サッパリ…それで今レオナさんが復旧作業中ッス｣
｢なるほどねぇ…何とかなりそうならいいけど｣
｢大丈夫じゃないッスかね、機材は正常ッスからデータの入れ直しだけで済みそうなんで…やってんのレオナさんスけど｣
ヴィル先輩の事とマレウス先輩の事は絶対に言わんとこ、怪獣大戦争になり兼ねん。
雑に頑張ってーと声をかけて、控え室の方に行ってみようと足を向ける。
途中擦れ違ったジャック君とちょっと話して、さっきまでは禍々しかった廊下を通る。
綺麗サッパリはこちらもで、あのおぞましさは霧散していた。
｢…あ｣
｢ん？｣
そっかぁ、控え室って連立してるからなぁ。
画面越しに見てた愛くるしい美少年が目の前に居るとか、有り得ない事ではないのか。
｢ネージュさん、ですか？｣
｢はい、ネージュ･リュバンシェです｣
トップスターの眩しい笑顔が眼前にある。
カリム君に勝るとも劣らない光属性だ。
RSAはこんな人ばっかなのだろうか…目が潰れる。
｢何時も見てます｣
｢わぁ〜嬉しいです、有難う御座います！｣
そう言って両手で握手してくる彼は会いに行けるアイドルのように気安い。
何コイツただただ良い子じゃん。
｢貴方はNRCの生徒さんですよね？｣
｢あぁ、はい｣
｢ヴィー君のお友達かな？ヴィー君は格好良いお友達がたくさんいますね｣
｢…そうですね…そうかもしれないです｣
ヴィー君…ヴィル先輩の事だよな？
…突っ込まんとこ。
周りの人も格好良いはまぁわかる、友達かはわからん人ばっかだけど。
つか、俺も格好良いに入ってるの？マジで？(社交辞令なんて知るか)
｢僕、ヴィー君と同じステージに立てるのが楽しみなんです｣
｢そうなんですか、ヴィル先輩もそうだと思いますよ｣
｢えへへ、そうだと嬉しいな｣
何だこの全方向好感度激高少年は。
物珍し過ぎて戸惑うわ。
ヴィル先輩、この人は戦っちゃいけないタイプの人だと思います。
色んな意味で損します。
廊下の向こうから、彼を呼ぶ声がした。
姿が見えないんだが、そんなに遠くから呼んでる感じはしない。
｢僕行かないと｣
｢あ、引き止めてすみませんでした｣
｢いえ、元気を貰えました！有難う御座います｣
｢こちらこそ、頑張ってください｣
眩しい笑顔でお礼を言われ、彼が去っていく姿を見送る。
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作者名：きない | 作成日時：2021年1月13日 18時
