百五十三歩 ページ25
俺の御礼の言葉に嬉しそうに笑う学園長…え、何このオッサン可愛くない?震える。
俺が自分の思考に震撼している間に話は進んでいき、ヴィル先輩のスタートの声に合わせて監督生がオーディオのスイッチを押した。
流れてくる曲は、カリム君が夜に歌っていた歌。
夕食後にデュース君がエペル君と頑張って練習してたステップ。
食事の準備中にジャミル君がルーク先輩の口ずさむのに小さく合わせていた歌詞。
こうして実際に見ると印象が変わるもんで。
「…いい曲ですね」
「そうですね、彼等に良く似合った素晴らしい曲です」
「良いなぁ…俺も、」
「歌いたい、ですか?」
学園長の優しい声に小さく頷く。
ふふ、と吐息で笑うのが聞こえた。
「軽音部も練習をしているようですよ」
「え?」
「見に行ってみてはどうです?ダイヤモンド君達も喜ぶと思いますよ」
「…時間があったら、行ってみます」
何だよ、やっぱりやべぇ人じゃん。
やべぇ優しい人じゃん。
これが終わったら、先輩達に連絡してみよう。
練習見学を終え、俺は直ぐにケイト先輩に連絡を入れた。
既読早いのは絶対ケイト先輩だから。
予想通り即既読が付いて、
来て来て〜(♦゚∀゚*)待ってるよ!
と返事が着た。
ヴィル先輩に一言、軽音部に行く事を伝えてポムフィオーレ寮から出ると、そのまま鏡を通ってオクタヴィネル寮に。
自室のクローゼットから、式典服を取り出して抱えた。
「あれ〜?ナマコちゃんじゃん」
「フロイド君、何してんの?」
モストロ・ラウンジ開店してるんじゃないの?
廊下で出会したフロイド君に首を傾げると、ニコニコ笑いながら寄ってきた。
「アズールもジェイドも何か部活ので忙しいっていねーから散歩してた」
「モストロ・ラウンジはよ」
「知らね、そろそろどっちか戻るんじゃね?」
…確かラギー君も暫くは設営で忙しいって言ってたよな…いや、うちの寮生なら大丈夫だ、伊達に不可抗力の面倒事に巻き込まれていない。
「ナマコちゃんこそ何してんの?合宿は?」
「軽音部に顔出そうと思って、ヴィル先輩に許可もらって出てきた」
「何で式典服持ってんの?」
「…一応?衣装で使うかなと」
多分あの人たちなら今回もこれ着るだろ、みたいな。
「ナマコちゃん軽音部好きだね」
「そうだね、結果的には好きになったね」
「あんなにビビってたのに、変なの」
「それはフロイド君に対してと同じかと」
「あ?」
だから何度も言うけど美形の真顔は怖いってば。
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作者名:きない | 作成日時:2021年1月13日 18時