イナズマイレブン～脅威の侵略者編～第7巻 (ページ9)

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（２８７）気になっただけページ9

聖羅「アメリカに行ったのは一樹さんの仕事でだけど、あの時のあたしって荒れてたよな。今思い出したらなんか事故っつーか……事件みたいな大ごと起こした気もすんだけど」

蓮『俺のデータが破損しているのも、そこから先だ』

どれだけ過去の出来事を記憶だけで探っても、手掛かりが調達できない今では真相へ辿れない。

色々あった、という言葉では括れないのだろう。

とりあえず、一旦頭の中をリセットするためにヘッドフォンで曲を聴こうとして……その手を止めた。

……そうだアイツらがいる。

ポケットからタッチパネル式ケータイを引っ張り出し、電話をかけた。

わずかワンコールほどでガチャッと鳴る。

ヴァイラル『聖羅さん？どうしたんです、聖羅さんからお電話なんて珍しい』

電話の向こうから鈍い打撲音と断末魔を背景に出たのは、ヴァイラルだ。

おそらくアイツらの縄張りとも知らずにアクトをしている輩……アクターを、ヤクザの仕事として部下か誰かが始末しているんだろう。

本当に、人間は低脳な生き物だと思う。

ヴァイラルに続いてライゼが「聖羅どうしたの？」と気の抜けたような声が横入りする。

聖羅「聞きたいんだけど。あたしがアメリカで起こした事故のこと、なんか知らね？」

ヴァイラル『アメリカに滞在してた時のことですか？ ……ん、アメリカでもアクトをしていたのは覚えていますよ。無名の歳小アクターが現れたって話』

聖羅「そんなのどうでもいいから。覚えてんの、ねーの。どっち」

ヴァイラル『…………。それは、聖羅さんの方がよく知ってるんじゃありませんか？』

聖羅「……もういい、時間のムダだ」

一方的に通話を切って端末を投げれば、枝にかけたカバンに飛び込んで振り子みたいに揺れた。

戦慄し荒れた場所はすでに静寂と化しており、ライゼの凭れた壁には船の絵が描かれていた。

砂の波に載った帆船の絵に、ライゼは目をやった。

ライゼ「……Desert Ocean、ねぇ……」

＊

深く知りたいという気はさらさら無い。単に気になっただけだ。

過去に自分が何をどうしてたかを知ったところで、得るのはいらない情報ということでしかない。

……けど、全く憶えのない記憶の手掛かりというかけらは、パズルのように一片を見つければ完成図が気になるから残りを掻き集めたくなる。

──知らないよりは、知っといた方が得。

そう言ったのはアイツだ。

……だから、あたしもその「得になる方」を選んだ。