イナズマイレブン～脅威の侵略者編～第7巻 (ページ1)

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（２７９）疑問ページ1

夏未「……あら、彼は？」

塔子の隣で座ってたはずの少年が、毛布を残して忽然と消えていた。

円堂「……！？空翼もいない？！」

風丸「俺達と窓際にいたはずなのに……！？」

＊

少年は雪の荒れる外で、キャラバンにまとわりつく羆にシュートを打った。

……が、ボールは視界の悪い吹雪の先で影が打ち返した。

？？「……？！」

戻ってきたシュートの軌道に一瞬驚くが、少年の表情は冒険心に促されるようにニヤッと笑い、キャラバンに引き返した。

未だに吠える羆は、現れた影を睨んで警戒を抱いていた。

1歩でも動けばこの雑食獣に肉は裂かれ、貪り喰らわれることはほぼ確実だ。

そんなことは100も承知の上か、影…………聖羅は、髪を庇うようにパーカーのフードを押さえ、羆に踏み出した。

羆の唸る声が強くなり、今にも飛びかかるような体勢になっている。

『……おまえは、人間に怯えて、いるのか』

1人ではない、二重の声。

まるで拡声器に通したかのようなノイズ混じりの紡がれた『声』は、羆の心にわずかな赦しを与えた。

『人間は、傲慢な生き物だ。警戒するのも、無理は、ない』

白く、細い指が羆に伸ばされ……触れる。

張り詰めていた嫌悪感は、もう羆から感じられなかった。

それどころか、その手が思いのほか心地よかったのか身を擦り寄せるくらいだ。

『……この手は、いつになれば人間から赦されるんだろーな』

ふと素朴な疑問を感じたが、気に留めることもなくその思考を捨てた。

考えたところで所詮意味のないことだ、と。

羆の前足が、ふと目に入る。

……血だ。

赤い雫は毛深い前足を染め、雪をじわりと滲ませていた。

『…………。他人を助けるのに意味はない、か』

独り言のようにボソッと呟き、バンテージからはみ出た白い指先で羆の傷口をなぞった。

羆が痛みに「グルッ」と唸る。

傷口に触れたまま、聖羅は目を閉じた。

視界という視界が全て白い炎に包まれる。

温かさの感じない、光に似た白い炎だ。

ごうごうと荒れていた吹雪の音は遠ざかり、代わりに歌が強く響く。

羆の心があたたかさで満たされていく。安堵が広がる。

目を開けると同時に、体から溢れ出たまばゆい光の束が羆の元に流れ、その巨軀を取り巻いていた。

だが、すぐに空気の中へ溶けるように光が消えた。

白い炎も旋律も去り、何もなかったかのように吹雪の荒れる音が元に戻る。

……指先を下ろすと、羆の前足にあったはずの傷はきれいに消えていた。