イナズマイレブン～FF編～第2巻 (ページ48)

今日:28 hit、昨日:3 hit、合計:33,143 hit

（９６）不便ページ48

視界がはっきりとしてくると同時に雷門中一同が目にしたものは、ゴールを3人でずらす秋葉名戸の選手の姿だった。

その1人を阻止するように、目金は相手のズボンを引っ張っていた。

円堂「ゴールをずらしてる？！」

豪炎寺「シュートが入らなかった訳はこれか！」

聖悟「アイツらロープで吊るしてくる。
ゴールをずらす？ふざけんなよ、ボケが」

夏未「天空くん？騒ぎを立てることはしないでちょうだいね」

冗談はさておき、呂薄の先ほどスライディングで弾いたので、タッチラインを越えた雷門ボールのスローインからだった。

聖悟の口から、大きなため息が漏れる。

秋「何してるの、天空くん？まだ試合の途中よ？」

聖悟「……いや、この勝負、雷門中が勝つから。結果見えたから帰る。じゃあな」

夏未「ち、ちょっと待ちなさいよ。天空くん！」

夏未の呼び止める声も耳にとどかず、聖悟は黒ジャージを羽織るとフィールドを後にした。

何もない廊下に、ただただ聖悟の足音だけがコツコツと響いては虚空に消える。それを繰り返していた。

たまにある曲がり角でスニーカーの軋む音だけが、それを紛らわせる。

鬼道「相変わらず表情を表に出さないな……、お前は」

何も考えずに出口に向かって最後の一直線を歩いていた。

そのせいか立ち塞がるかのように壁に背を付け、腕を組む人物が声を発するまで、周囲の気配に気づかなかった。

聖悟「アンタは知ってるみたいだけど、こっちは微塵も知らないんで。
よって、話す事がないのならば時間のムダなので通させてもらう」

互いに一言だけのやりとりは終了し、聖悟は鬼道を横切ろうとした。

鬼道「『天空聖悟』……。オレはその名が本性じゃないことを知っている」

聖悟「……前提。もしもそれが脅しと考える。
結論。その程度のことで僕の意思は揺らいだりしない。以上」

徐に再度歩き出した聖悟は、早足で出口の取っ手を掴み、身を外へと投げ出す。

夜日名「聖悟様。おかえりなさいませ」

あらかじめ呼び出した執事の夜日名は、柔らかく微笑む。

にじみ出るその誠実さからは、何か裏がありそうな雰囲気を醸し出していた。

聖悟「…………」

夜日名「……ん、どうかなさいましたか？」

聖悟「いや……。何も覚えていないと、割と不便だ、と思ってな」