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燐寸30 ページ31




「…では、あの少年は貴女の眷愛隷属なのですね」

全く異能特務課の威厳も何も有ったものじゃない。

ぐったりとした様子で長椅子で横になる、其の頭を膝に乗せていた。

「無理に喋らなくて良いわ。もう聞きたい事は聞いたから」

油断も隙もない。

嵌めようとした返礼に洗いざらい吐かせたお陰で此方の情報は潤った。

「そう、研究施設の創設が七年前ね」

其の後から研究が開始されたのだから、辻褄は合う。

「分かった事、は報告してください…ケホッコホッ」

「無理しては駄目よ。飲ませてあげるから体に負荷をかけないで」

「普通に飲め_んむ」

「ん」

陽が昇った時に帰れなないのは困る。

調子に乗ってやり過ぎた自覚は有る為、仕事が出来ない状態で帰して彼の部下に怒られるのは避けたい。

「でも元はと云えば貴方の持ってきた薬よ」

「…其の話、は、もう」

「良い効き目だったわね。数粒(・・)貰おうかしら」

「…」

「冗談よ」

そう、上着のポケットに有るのね。

後で全て(・・)貰おう。

目線で教えてしまった事に気付かない可愛い人。

頭を撫でる手、優しく一定のリズムで腹部に当てる手を止めない。

「異能力、燃える、魔女、記憶、燃えない」

生まれ育った家で幼少期、思い出した前世は一部だったのだ。

炎を操る魔女。

だから異能力も炎を操る物だと思っていた。

転換点は間違いなく、中也に襲われ死に瀕したあの日。

無意識下で炎を打ち上げた事が原因で記憶が混濁したと考えていたが違う。

完全に前世を思い出した衝撃で今までの記憶を忘れたのかとも考えていたが違う。

ずれていた。

私の知識と記憶が、錯誤していた。

「何故なのか、其の理由が漸く分かった」

だから取り戻すまでに時間が掛かった。

「…手を、止めてください」

「眠って良いのよ」

「未だ、仕事が、」

「散々啼いといて言う?」

「其れは貴女が_ケホッ」

「ほら、お口開けて」

口移しで与える液体は温い。

至近距離でかち合う瞳は_ぐずぐずに熔かしてしまいたい。

「あの少年に流れる私の血がなくなれば完全に制御出来るわ」

「詰まり、」

「間違いない。矢張り私の異能力は_」


燃えないこと

「私の炎を操る力は、魔女の力」

『自爆装置』とは周囲諸とも自らも燃えるから付けられた二つ名だ。

今では異能力のお陰で其の心配がない。

「火炙りで死なない魔女なんて最高だと思わない?」

皮肉たっぷりに嗤う。

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年10月28日 0時

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