燐寸18 ページ19
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「おいコラ、起きろ」
「！ ふぅっ……しぬっ…」
「態と息を止めてんじゃねェ。其れとも人工呼吸がお望みか？」
寝ている人の腹に乗って起こしといて、なかなか虫の良いことを言う。
遠慮なしに開け放たれた窓から朝陽が射し込み風がまわる。
「ねむい」
「手前の朝の弱さは如何にも直らねェな」
「さむい」
「今日は陽が出て暖かいってよ。おら、来い」
ぐずぐずと体を丸めるも重力に布団を剥がされる。
半開きの目を不細工だと言われながら、手を引かれるままに体を起こした。
勢い其のまま倒れ込む私を慣れた手付きで抱き留める。
「中也はいつまでも子供体温だね」
「おちょくってんのか殺すぞ」
「此れが巫山戯ているように見えるのかい」
「見えねェから怒ってンだよ！」
「おうおう…落ち着け」
カッカと怒る中也が暖かい。
丈の短いジャケットは手を入れ易く、すり寄った首元は相変わらず良い匂いがする。
今日の朝御飯はフレンチトーストらしい。
「…美味しそう」
「ややこしい発言をすンな！」
「良い匂い」
「嗅ぐな！ 暖まったなら離れろ！」
「無理寒い」
「ひっ、服に手を入れンなァｯ！」
「何もそんなに怒らなくても」
「油断も隙もありゃしねェ」
身を掻き抱いて牙を剥き、部屋の隅で警戒している中也を横目に淹れたての紅茶を飲み干す。
「そう警戒せずとも無断で取って食ったりしないよ」
「当たり前だ！」
相変わらず小さな怪獣みたいな中也はずかずかと大股で歩いてきて私の腕を引っ掴む。
「んむ、」
唇を食べられる。
「蜂蜜がついてンぞ」
「…ついてた、の間違いだろ」
其れに違うものがまたついた。
「朝から大胆だねえ。そういうプレイに興味は無いよ？」
「手前が煽ったンだろうが」
は、と鼻で笑う其の姿も様になる。
いつも通り、なのだけど。
「ア？ 何だ」
「眠れなかったのかい」
「……」
小さくとも私よりは大きい。
目の下をそっとなぞると蒼の瞳が細くなった。
「ンなことねェよ」
「君の仕事量は把握しているのだよ？」
徹夜仕事なんて無かっただろう。
「太宰が気になるのかい」
「＿何で俺が」
「私の居場所は此処だよ」
顔を見てなんて照れ臭くて言えやしないけど。
「中也は私がいないと駄目だねえ」
「どの口が言ってやがる」
「此の
紅を引いた唇に指を当て、ニヤリと笑う。
中也の鏡越しに合った目もニヤリと笑った。
「塞いでやるから
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作者名：梦夜深伽 | 作成日時：2020年10月28日 0時
