燐寸16 太宰side ページ18
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何故こうなった、という考えが脳内を埋めた。
言い争いの果てに吐かれた拒絶の言葉。
後を追いかけた先で見た倒れ伏す姿。
状況を観察する冷えた視線と、友好的で優しい態度。
ベッドで死んだように眠るAを前に立ち尽くす。
「……なんで」
「あァ?」
「どうして君まで此処にいるんだ!」
「そりゃ
幾らAが起きないからって、眠る近くで大声を出す気はない。
必然的に中也との距離を詰める事になってまた腹が立つ。
「此処はAと僕の部屋だ!」
「俺の部屋でもあるんだよそして寝室は此処だ!」
「煩いなぁ、今何時だと思ってるんだ」
パッと部屋が明るくなった。
電気がついた訳ではない。
ゆらゆらと影が揺れて、欠伸をするAの眠たそうな顔が炎に照らされていた。
「と云うか如何して二人とも此処に…あぁそうか、森さんの仕事か」
Aは起きているけど起きていない。
昼間は完璧な淑女の振る舞いをして魅せるけれど、どうやら素はかなり豪快らしかった。
普段こそ自制している様だったが、記憶を失ってからは更に顕著で男勝りな部分が目立つ。
「十五、六の男女が同居、森さんの狙いが透けて見えるねえ」
そして其の代わりの様に暴力的な意思や発言が多く見られる。
何かを隠していた
「まぁ間違って撃つことは無いから安心してよ。『自爆装置』の名は伊達ではないけれど、制御には自信があるんだから」
「ねえ、其の自爆装置って如何云う意味?」
「其のままの意味だよ。"外"を起点とするよりも"内"を起点とした方が得意だったからね」
ぐん、と体を逸らして伸びをするAの胸はまだ平たい。
「本当に私は話していなかったんだねえ。力も隠していたようだし…」
間延びするような話し方はA自身が思考を巡らせている時の癖らしかった。
ゆっくりと少しずつ考えを口にして整理しながら、相手に会話の主導権を握られないように。
「森さんは私を"感情"で縛ろうとしている。立場的には君達の"姉"として」
計画自体は随分と前からあったらしい。
ただAは拒んでいた。
「君達は私を"女"と見て堕としに来るのに」
まるで
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年10月28日 0時