笑って少女7 ページ8
港。
「_Aっ!!」
「総悟!一人で突っ込むんじゃねぇ!」
あちこちで火薬の爆ぜる音がして、
刀が肉を断ち血飛沫をあげる。
生憎の曇り空が、どんよりと、
その気持ちを黒く沈めていく。
船はひとまず移動することにしたらしい、
巨大な起動音の中で小さな姿を探す。
「_いた!」
窓から、飛び出してくるA。
横から斬りかかってくるのを
邪魔すんな、と短く吐いて斬り捨てた沖田は
地面を強く蹴って走る。
「_間に合わねっ」
「_っぃよっ、とぉー、」
「_な、」
本来いないはずのその人に、
思わず声をあげた沖田だが、Aの安全が
確保されたことを理解したら最後、
沖田の仕事は残すところ1つだけである。
足を止め、体の反転と共に
背後に迫っていた二人組を叩き斬る。
それが最後だったらしく、
雄叫びをあげ向かってくる敵はもういない。
「よぉ、このチビ、人見知りか?」
「旦那ァ、どうしてここにいるんですかィ」
受け止めたのは、片手でAを抱え、
もう片手で木刀を振り回している坂田。
両手で顔を覆っているAから目を離さない。
「猫探してたらいきなり砲撃されてよぉ、
ちょうど見つけたと思って手ぇ伸ばしたら
掴んだのはこのチビだったってわけだ。
なに、沖田くんのコドモ?」
「一体誰とのですかィ、」
苦虫を噛み潰したような表情をする沖田に
坂田は ま、そうだわな、と
あまり感情のこもっていない声を出す。
「そいつをそろそろ返してくれやせんか、
一応感謝はしまさァ、ありがとやんした」
「総悟_と、万事屋、」
「あれ、土方くんも一緒?
え、なに、珍しく仕事してんの、」
「誰がキャッチしたかと思ったらてめぇか」
「なに?善良な市民が協力してやって…」
「どぉこがだ、依頼だなんだで首突っ込ん…」
互いの胸ぐらを掴み合って
口喧嘩を始めた二人に背を向け、
沖田は腕の中で微かに震えている温もりに
そっと声をかける。
「A、怪我してないか、
ちゃんと俺に顔を見せてくだせェ」
「_」
寝間着の、長い袖も使って顔を隠すAは
拒むように首を横に振る。
「(…珍しい)」
いつもニコニコとして、
無邪気に愛想を振りまき走るAは
怖がることがあまりない。
犬、雷、虫、更に言えば誘拐だってそう。
下手すると自ら囮として誘拐されていると
勘違いさせるほど頭がよく回る、賢い子だ。
それが一体どうしたのか。
「…あ、お腹空いたとか」
「♪」
頷くA。
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2018年3月2日 23時