笑って少女4 ページ5
真選組。
「…と、報告は以上です」
ﾊﾟﾘﾊﾟﾘﾊﾟﾘ
「こちらも異常ありません」
ｶｻｶｻ、ﾋﾞﾘｨｯ…ﾊﾟﾘﾊﾟﾘ
「ご苦労だったな。では次だが…」
ﾓｸﾞﾓｸﾞ…ｺﾞｸﾝっ
「ケホッ、ｺﾎｯ」
「慌てて食べ過ぎだA。
ほら、冷ましてあるけどゆっくり飲めよ」
「…あの、副長、誰ですかその子、」
報告に来ていた新人隊士が、
恐る恐る、それでもやや不愉快そうに指をさす。
土方から湯呑みを受け取り、
コクコクと飲み干したAは首を傾げた。
胡座をかく土方の上に座ったまま、
湯呑みを返したAはまたお菓子に手を伸ばす。
小さな白い指がお菓子の上をさ迷って、
チョコレートを手に取るのを見届けてから
土方はようやく新人隊士へ視線を戻した。
「てめぇにゃ関係ねぇ。気にせず報告を続けろ」
ｶｻｶｻ、ｸﾁｭ、ｺﾞｸﾝ
「いや、無理ですよね。
来てからずっと思ってましたけど、
誰ですかその子、女人禁制でしかも会議にも」
「うるせぇ。文句があんなら
それ相応の実績を残してから言ってみやがれ」
「そ、んな」
新人は滅茶苦茶だ、と顔を歪める。
ただでさえ女人禁制のはずの真選組に、
しかもこんな子供が、
いるだけでも問題だと言うのに、
報告から重要な会議に至るまでに出席、
しかも幹部席、それどころかその膝の上という
特等席もいいところでお菓子を頬張ることに、
可笑しい、と一言告げただけなのに。
返事は知りたきゃ幹部、それどころか
この席まで上り詰めてみろときた。
悪い噂も多々ある真選組だが、
憧れを持って入隊してくる者も多い。
彼もその一人であるがために、
目の前の少女の愚行と
慕うべき副長の威厳のなさに
新人としては最早怒りを覚えていた。
「？」
気に食わない。
そこにいるせいで真選組は。
「おい」
「…はい」
ぐっ、と畳の上で拳を握り締めた新人が
顔をあげると、そこにはいつの間にか
土方が立っていて此方を見下ろしていた。
手にはよく手入れされている刀。
先ほどまで膝にいた少女は、土方に隠れて
よく見えないがどうやら座蒲団に座って
まだ食べているらしい音だけが聞こえる。
土方の、少女に向けていた甘い微笑みとは違う
その鬼の形相に、新人は青ざめる。
「Aに手ぇ出したらその命はないと思え」
「っは、い」
仮にも警察がそれを言うのはどうなのだ、
そう思ったが反論を許されるはずもなく。
命からがら報告を終え、逃げ出した。
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作者名：梦夜深伽 | 作成日時：2018年3月2日 23時
